【ケニア派遣155日目】「意識高い系」から「合理的」へ。恵比寿のオーガニックとケニアの命の循環

カカメガでの活動
カカメガでの活動

パンガの魔法と、農業の「暗黙知」

午前中は、マッシュルーム農家の元で培地を作るための仕込み作業を行いました。 材料となるバナナの葉っぱを、細かくチョップしていく作業です。こうすることで、キノコの菌が広がりやすくなり、分解が早まります。チョップが終わった後は、発酵を促すために全体の水分量が60%くらいになるように加水し、シートで覆ってきました。

このバナナの葉を刻む作業には「パンガ」と呼ばれるナタのような道具を使うのですが、この切れ味が決して良いとは言えません。むしろ、かなり鈍らです。 しかし、現地のケニア人がそのパンガを握ると、まるで魔法のようにスムーズに、リズミカルに葉っぱを刻んでいくのです。彼らの道具を扱う姿には、無駄がなく、その道具の理想的なイデアを見ているかのような美しさすらあります。

農業初心者である私にとって、農作業における最大の壁は「力の使い方」です。 いかに上手に道具を使い、力を伝えるか。どこまで丁寧にやる必要があり、どこから適当で良いのか。それを身体で理解していなければ、無駄な力を使って翌日ひどい筋肉痛になったり、作業ペースで圧倒的な遅れを取ったりしてしまいます。

これは本を読んで学べるような言語化された知識ではなく、自転車の乗り方と同じ「暗黙知」です。頭を使いながら、泥臭く量をこなして身体に染み込ませていくしかありません。

お節介な恋愛指南

作業を終えての帰り道、同行していた実習生から、なぜか唐突に恋愛の指南を受けました。

「いい人がいたら、自分から積極的にアプローチしないとダメだよ!」
「ちゃんと結婚しないとダメだからね!」

余計なお世話だと思いつつも、こういうお節介を焼いてくれるのがケニア人の温かさでもあります。彼らにとって「結婚し、家族を持つこと」は人生における絶対的な正義であり、最大の関心事の一つなのです。苦笑いしながら、適当に相槌を打って家路につきました。

砂糖の街のモラセス(糖蜜)と、サンタクロース

午後は、マッシュルーム栽培に必要な資材の買い出しのため、隣町のムミアスへ向かいました。

すっかり顔馴染みになった行きつけのAgrovet(農業資材店)へ。必要なものをサクッと買うことができ、10kgの大きな資材の袋をまるでサンタクロースのように肩に担いで帰路につきました。

今回購入したものの中に、「モラセス(糖蜜)」があります。 モラセスは、砂糖を精製する際に出る副産物で、農業や畜産において微生物の働きを活性化させるための優秀な資材として使われます。 ここムミアスは、かつて東アフリカ最大の砂糖工場があった「シュガータウン」です。だからこそ、サトウキビの搾りかすや、このモラセスといった副産物が、地元で大量に、しかも簡単に手に入ります。

地元で手に入りやすいものをうまく活用し、次の新しい栽培に生かしていく。まさに地域の中での「資源の循環」をリアルに感じることができ、とても素敵なことだなと思います。

恵比寿のオーガニックと、ケニアの循環

菌、微生物、そしてミミズ。 マッシュルームの菌に触れ、農家が作るコンポストや、し尿を活用した液肥などを見ていると、そこにある「生命の循環」を強烈に感じます。

自然の力は、本当にすごいです。そして何より面白い。

日本にいた頃、職場があった東京の恵比寿を歩きながら目にする「オーガニック」という言葉は、どこかキラキラとした、少し意識が高い人たちのための特別なものだと思っていました。 しかし、ケニアの農村で見るそれは、全く違います。 意識が高いとか低いとか、そんな次元の話ではありません。もっと土臭くて、豊かで、とてつもなくパワフルなものなのです。

高価な化学肥料が買えないからこそ、身の回りにある自然の力と知恵を総動員して命を循環させる。もちろん、大規模な商業農園で全てをオーガニックで賄うのは至難の業かもしれませんが、小規模農家にとっては、極めて地に足のついた「最も合理的な生存戦略」なのだと気付かされました。

彼らのパワフルな循環の輪に感化され、私も最近始めた自宅の家庭菜園で、コンポスト作りに挑戦してみようと決意しました。 土に触れ、命が回る手触りを感じながら、また一つケニアの暮らしの解像度が上がった1日でした。

米、キャベツ、じゃがいも、トマトなど。70円くらい

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