【ケニア派遣136日目】45時間ぶりのお粥と完全復活。住所のない国での配送サバイバルと、農家の当事者意識

カカメガでの活動
カカメガでの活動

お粥で復活と、名簿の非効率

約45時間ぶりに口にした食事は、少しのお粥。
まだ食欲が全開というわけではありませんが、体調は確実に良くなっています。

復活!ということで、今日から本格的に仕事に復帰しました。 朝、事務所に向かうと、建物の周辺に大量の農家の方々が座り込んでいました。障害者や未亡人の農家に対する、政府の種子・肥料配布プロジェクトの続きです。 担当のオフィサーがまだ来ていなかったので、電話で呼び出し、名簿の確認と配布作業のお手伝いをしました。しかし正直、もっと効率化したいと思わざるを得ませんでした。 大行列ができているのに、一人ひとり確認して「君はリストにない」とか「今は違う」とかやっていて、とにかく非効率なのです。例えば、名簿をアルファベット順にしておけば、名前を探すのが一瞬で終わるのにな。エクセルで並べ替えれば1秒なのに……とか。心の中でそう突っ込みますが、事務所にはWi-FiもPCもないので、そんなことを言っても仕方がありません。
アナログな手法に付き合うしかありません。それでもできることはあると思いますが。

弱者支援の矛盾と、サインを拒む理由

並んでいる障害者の方々を見ると、足に障がいを持っている方が多い印象でした。 奇形のような状態の人もいれば、おそらく「スナノミ症(土の中のノミが足に寄生する病気)」を患っていると思われる人も。杖をついている方も多く見受けられました。 そういう方々に、重労働が伴うメイズ(トウモロコシ)の種や肥料を配って、本当に彼ら自身で栽培できるのだろうか。もっと彼らの実態に合った、違う形の支援方法はないのだろうかと考えさせられました。

また、配布の際、未亡人で年配の女性の中には「サインを断る人」が結構な数いました。

【考察】なぜ年配の女性はサインを拒むのか?
ケニアの農村部において、高齢女性が書類への署名をためらうのには、主に2つの深い理由が考えられます。※2 はAIによる考察

  1. 非識字: 歴史的に女性の教育機会が限られていた世代のため、自分の名前を読み書きできない。多くは拇印で代用しますが、それ自体に戸惑ってしまう。
  2. 詐欺への恐怖と警戒心: 「よく分からない書類に自分の名前を残すと、土地を奪われたり、身に覚えのない借金を背負わされたりするのではないか」という強烈な警戒心。過去にそうした詐欺が横行していた背景もあり、自己防衛本能が働いている。

支援の現場には、単にモノを配るだけでは解決しない、教育や歴史的トラウマといった根深い課題が横たわっています。

「住所がない国」の配送サバイバル

並行して、一昨日に発注していたマッシュルーム用の金属ドラム缶の配送手配をしていました。
ここで立ちはだかるのが、ケニア最大の物流の壁です。

ケニアには「住所」がありません。

そのため、土地勘のないドライバーに電話口で目的地を案内するのは、至難の業です。 「あの大きな木の角を右に曲がって、青い屋根の建物の次……」といった具合にランドマークで説明するしかないのですが、農家の家は少し奥まった場所にあるため、私には到底説明しきれません。結局、職人のドライバーと農家を直接電話で繋ぎ、現地人同士で案内してもらって無事に届けることができました。一苦労です。

【コラム】ケニアとアフリカの「住所」事情

なぜケニアには住所がないのか? 歴史的に「郵便」は家まで届けてもらうものではなく、郵便局の私書箱(P.O. BOX)へ自分から取りに行くスタイルだったため、道や建物に番号を振る文化が育ちませんでした。急速な都市化とスラムの拡大も、インフラ整備が追いつかなかった一因です。

デジタル化によるリープフロッグ しかし現在、eコマース(Jumiaなど)やデリバリーの普及により「最後の100メートル」で迷う問題が限界に達しています。ケニアではまさに今月(2026年4月)、デジタルIDと紐付けた「国立住所法」の制定議論が白熱しています。 アフリカ全体を見ても、ガーナ(5m四方のグリッドに独自コードを付与)やナイジェリア(デジタル郵便番号の導入)など、「紙の住所整備を諦め、デジタルの位置情報をそのまま住所にする」という逆転の発想が急速に進んでいます。 数年後には、スマホのコードが彼らの正式な住所になっているかもしれません。

「これは私のプロジェクトだから」

昼過ぎ、パートナー農家の元へ向かい、届いたドラム缶と小屋の進捗を確認しました。

ドラム缶は想像以上の仕上がりでした。穴を塞ぎ、蓋を作り、注文した通りに完璧に加工されています。さすがはケニアの職人です。

マッシュルームを栽培する建物に関しては、壁が少し崩れてしまったらしく作り直している最中で、乾くのを待つために少しスタックしていました。しかし、大工も含めて私の注文の意図がしっかりと現場に伝わっていたので、そこは一安心です。

そして何より嬉しかったのは、農家の方がこう言ってくれたことです。

「これは私のプロジェクトだからね」

今後のスケールアップの構想まで自ら語ってくれました。 私がやっているのはあくまで「初期投資の支援と知識の提供」に過ぎないということを、彼自身がしっかりと認識し、当事者意識を持ってくれている。これほどありがたく、心強いことはありません。まずは1サイクル目を成功させることで、農家自身の”有能感”を高め、やる気を引き出していきたいです。(Cf:自己決定理論)

来週末から再来週には栽培のプロセスを始めたいと話していますが、ここはケニア。
色々な調整事項があり、予定通りにはいかないでしょう。それでも、自分ができる準備をしっかりと進めていきます。

お茶漬けと、日常への帰還

今日のお昼も、胃を労わってお粥にしました。
そして夜は、少しふやかしたお米で作ったお茶漬けです。

夜になる頃には食欲もしっかりと回復してきて、お茶漬けの優しい出汁の味が体に染み渡りました。明日も油物はできるだけ避けつつ、少しずつ通常の生活と食事に戻していきたいと思います。

激しい体調不良を乗り越え、現場の課題に触れ、農家の熱意に救われた1日。
ようやく、日常が帰ってきました。

帰り際にいただいたアボカド。含めて7個。
多いな!と言うと、そんなことないよと言ってくる農家さん。農家さんって感じだな…笑

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