【ケニア派遣301日目】頭上15kgの種菌と、自作粉砕機の復活。

ケニア派遣301日目。ムスリムが多く日曜日に動ける農家とともに、キノコ第2サイクルの培地作りへ。15kgの種菌を頭に乗せて歩く頭上運搬の合理性を実感しつつ、バガス不足をメイズ芯で代用。壊れていた粉砕機を自力で直したお父さんの自作設計に驚嘆し、家族総出で150袋をパッキングした活気ある一日を綴ります。

頭の上に乗せた15キロと、日曜日に動く現場

日曜日。 一般的なキリスト教圏のコミュニティであれば完全に活動がストップする曜日ですが、今日は朝から現場へ出動しました。

私の暮らす地域はムスリムの方々が多く暮らしているため、日曜日であっても普段通りに畑に出て作業を進める農家さんが一定数存在します。週末の暦に縛られず、こちらの都合やタイミングに合わせて柔軟に作業日を設定できるのは、活動を進める上でありがたい環境です。

出発前、重たい荷物をどう運ぶか考え、「頭の上」に乗せて運ぶことにしました。

荷物の重さは、およそ15キログラム。中身は、今日から仕込むキノコ栽培用の種菌たちです。

両手で15キロを抱えて歩けば、10分もしないうちに前腕が悲鳴を上げます。 しかし、頭の頂点にしっかりと重心を乗せて背筋をピンと伸ばして歩くと、驚くほど身体の軸が安定し、30分間の道のりを踏破することができました。

アフリカ各地の路上で、大きな荷物や水タンクを器用に頭に乗せて平然と歩くおばちゃんたちの姿をよく見かけます。あれは単なる伝統的な風習ではなく、身体への局所的な負担を最小限に抑えて長距離を歩き抜くための、理にかなった身体技法なのだと納得しました。

自作設計の粉砕機と、農家さんの底知れない逞しさ

今日訪れたのは、キノコ栽培に新しく挑戦する新規の農家さんです。

彼らにとっては人生で初めての作業になるため、今回は私が先頭に立って主導権を握り、手順を一つひとつ実演して教えながら進めるスタイルをとりました。

予定では、培地の主原料としてサトウキビの搾りかす(バガス)を使う計画でした。 しかし、十分な量のバガスが集められませんでした。

ないものは、ない。

そこで今回は、メイズ(トウモロコシ)の芯をベースにして培地を組み立てることにしました。

メイズの芯を培地として活用するためには、細かく粉砕してチップ状に加工する必要があります。 農家さんの敷地には専用の粉砕機が置かれていたものの、長らく壊れたまま放置されており、全く動かない状態でした。

「どうやって砕こうか」と頭を悩ませていた矢先、農家さん一家が工具を手に取り、ガチャガチャと機械をいじり始めました。 そして小一時間ほど手を動かしたかと思うと、唸るようなエンジン音とともに、息絶えていたはずの粉砕機が勢いよく息を吹き返しました。

驚いて話を聞いてみると、なんとこの機械、以前にお父さん自身が図面を引いてゼロから設計し、組み立てた特注品なのだそう。

壊れたら自分の手で直す。 そもそも道具そのものを自分の頭で設計して作ってしまう。

目の前で繰り広げられたその圧倒的なDIY精神と逞しさを前にして、思わず感嘆のため息が漏れました。 現場のエンジニアリング能力の高さに脱帽します。

家族総出のパッキングと、「英語が話せない」マウント合戦

粉砕したメイズの芯に、不足していた資材を少し買い足してブレンドし、水分と栄養バランスを整えながら、専用のポリ袋へと手作業でパッキングしていく工程へと進みました。

今回の目標は、全部で「300袋」。これまでの倍以上の規模です。

今日は材料が足りず、その半分にあたる約150袋をパッキングしたところで作業を区切りました。

しかし初日にして150袋もの形を作れたのは、家族総出のサポートがあったからです。日曜日だったこともあり、普段は学校で教師をしているお父さんも一日中腕をまくって作業に加わってくれました。初期の仕込み作業はどうしても強烈な人海戦術を必要とするため、こうして人手が揃う休日に一気にギアを上げられたのは大きな収穫でした。

作業中、手を動かしながら飛び交う家族の会話も実に賑やかでした。

印象的だったのは、兄弟たちの小競り合いです。
まだ英語があまり話せない末っ子の男の子。上の兄や姉たちが、すかさずそこを突いてイジり始めます。

 「ほら、英語で話しかけてみろよ!」

ケニアにおいて、英語は学校教育を受け、教養を身につけていることの象徴です。
だからこそ、「英語が上手く話せない」という事実が、兄弟間における格好のマウントの武器になる。 英語でマウントを取り合う兄と、悔しそうに言い返す弟。その微笑ましくもケニアらしい力関係の可笑しさに、思わず吹き出してしまいました。

少し手が荒れながら、丸一日、土と粉塵にまみれて手を動かし続けた日曜日。

明日はドラム缶を使った高温での滅菌作業、そして明後日は種菌を植え付ける植菌作業へと進みます。
今日立ち上がった確かな熱量を逃さず、準備をしっかり進めます。

野次馬キッズたち。