【ケニア派遣291日目】手作りジャムの手応えと視察団の尻火。ガス欠の午後に出会った木の実のちびっ子たち

ケニア派遣291日目。朝から同僚たちと農家を回り、いちご・りんごの進捗確認ときのこ準備。再来週の日本からのODA視察団を前に焦り出した同僚が半強引に場を動かす姿に推進力のヒントを得ます。試作のいちごジャムは「市販品と変わらない」と大好評。ガス欠寸前の午後、木の実を食べる子どもたちとの可笑しな交流や、初めて送ったPodcastのお便りが長尺で読まれた嬉しい夜を綴ります。

ODA視察団の尻火と、市販品を超える試作ジャム

朝から同僚オフィサーたちと合流し、3人でパートナー農家さんのもとへ向かいました。

アジェンダは盛りだくさんです。 いちごとりんごの生育状況のチェック、日々の管理マネジメントのすり合わせ、そしてこれから本格化させるきのこ栽培に向けた準備物の洗い出し。

現場に着くと、同僚の立ち回りがいつもと明らかに違っていました。 再来週に控えている日本からのODA視察団の来訪に向け、いよいよ尻に火がついた様子で、かなり本腰を入れて主導権を握り、話をぐいぐいと前に進めてくれました。

指示の出し方や段取りの決め方は、傍から見ていると少し半強引に映る場面もありました。ただ、現地のルーズな時間感覚に流されず、明確な締め切りまでに形を作り上げるためには、このくらいの強気な推進力こそが一番効果的なのかもしれない、と横で見守りながら妙に納得させられました。

ディスカッションの合間、先日仕込んだ「手作りいちごジャム」の試食会を開きました。

想像以上の好評。

「これ、スーパーで売っている既製品とほとんど変わらないよ!」

農家さんからも同僚からも、口々に絶賛の言葉をもらいました。市販品レベルと言ってもらえたのはシンプルに嬉しいただ、作り手としての本音を言えば、「余計な添加物も入っていないし、売っているやつよりも美味しく仕上がっているはず」と、心の中でこっそり悔しがっていました。

ガス欠の午後と、木の実を頬張る子どもたちの視線

その後、別の農家さんのプロットへ移動しました。

そこでも様々な議論や確認作業が交わされていたのですが、正直なところ、この時点での私のエネルギー残量は完全にゼロでした。連日の思考過多が祟り、頭のワーキングメモリが完全にショート。椅子に腰掛けながら、意識が半分くらいどこかへ飛んでいきそうになるのを必死で耐えていました。身体は正直です。

重い足取りを引きずりながら家路を歩いていると、道端の木の下で、小さなちびっ子たちが集まって何やら夢中で手を動かしていました。 見ると、野生の木の実を一生懸命にもぎ取っては、口へと運んで食べています。

「何食べてるの?」

スワヒリ語で声をかけてみると、子どもたちは急に恥ずかしそうに口をつぐみ、照れ笑いを浮かべたまま黙り込んでしまいました。可笑しくなって、「私も一緒に食べていい?」と一歩歩み寄ってみたところ、不思議そうに丸く見開いた目でまじまじと私を凝視してきます。 警戒と好奇心が入り混じったその純粋な眼差しがたまらなく面白く、午後の激しい疲労感が一瞬で吹き飛んでしまいました。何気ない路上のワンシーンに、ふっと心が軽くなります。

声が繋ぐ近さと、初めて読まれたお便りの夜

我が家へ帰宅。
温かいご飯を胃袋に流し込み、溜まったタスクを軽く整理したところで、今夜は無理をせず完全にオフの時間を取ることにしました。

スマートフォンを開いて、楽しみにしていた番組を再生しました。
実は先日、お気に入りのPodcast番組へ、初めてお便りというものを投稿してみたのですが、再生ボタンを押し、番組を聴き進めていると、突然、自分の送った文章がパーソナリティの声で読み上げられました。

「うわ、本当に読まれた……!」

ただサラッと紹介されただけではありません。パーソナリティのお二方が私のメッセージをじっくりと咀嚼し、驚くほど長い時間を使って、熱のこもったコメントやリアクションを返してくれたのです。

部屋の中で一人、鳥肌が立つような嬉しい衝撃に包まれました。

画面の文字だけでやり取りするSNSとは全く違う、パーソナリティの息遣いや声のトーンを通じて、自分の存在と言葉がダイレクトに受け止められている感覚。この独特な距離の近さこそが、音声コンテンツの持つ最大の魅力なのだと、身をもって実感させられました。地球の裏側にいても、声の温度は一瞬で届いてきます。

半強引に場を動かしてくれた同僚の頼もしさ、手作りジャムへの確かな手応え、道端の子どもたちの可愛い視線、そしてイヤホンの向こうから届いた温かい声。

色々な感情の起伏に彩られた一日を終え、すっかり空っぽになったバッテリーを、今夜は深く休ませて満たします。