【ケニア派遣290日目】「見つかりません、で?」と思考停止する農家。小袋の怪我の功名と、長文メールのキーパーソン

ケニア派遣290日目。第2サイクルのキノコが2.5kg実るも、パッケージ袋の欠品で農家が思考停止するトラブルに直面。その場で卸業者を開拓し、手持ちの小袋で代用販売するなかで「高見えしない良さ」と「B2BにもD2Cにも中途半端な収量」の壁を実感。一方で、組合結成を持ちかける熱意ある長文メールの人物や、商工会議所フォーラム出展決定など、10月に向けた怒涛の展開を綴ります。

「見つかりません、で?」――思考停止への苛立ちと袋の代用

午前中は、キノコ栽培の進捗確認に向かいました。

第2サイクルの菌床袋たちも順調に動き始めてくれており、棚を見渡すと見事なキノコがたわわに実っていました。収穫量は、およそ2.5キログラム。少しみのりが遅れていましたが、しっかりと形になってくれて、安堵しました。

ところが、その直後に問題が発生しました。

収穫したキノコを詰めるための専用パッケージが、手元にひとつもありません。

農家さんに理由を尋ねると、「ムミアスの町まで探しに行ったけれど、店に見当たらなかった」と。

「……で?」

喉元まで出かかった言葉を、かろうじて飲み込みました。

できなかった、見つからなかった。その事実を報告して終わり、という姿勢に強いイライラが込み上げてきます。自分が想定していた選択肢が消えた瞬間、思考停止に陥って立ち尽くしてしまうのは、本当に勘弁してほしい。

「見つからなかったから、次はどうするのか」「近場で手に入らないなら、別のどこに当たるのか」「何かで代用できないか」。解決策や代替案を自ら考えようとしない態度に、どうしても苛立ちが募ります。

相手は60歳前後の人生の大先輩です。その年齢の大人に対して、外から来た若造の私がどこまでお膳立てし、どこまで手取り足取り指示を出さなければならないのか。マネジメント不足と言われればそれまでですが、当事者意識の薄さに胸の奥がチクチクと痛みました。

怒っていてもキノコの鮮度が落ちるだけなので、その場でパッケージの製造元へ直接電話をかけました。 大口の卸売をしてもらえるか交渉したところ、幸いなことに現場からほど近い場所に代理店があることが判明。すぐにその代理店へ連絡を入れると、悪くない単価で小分け販売してくれる話がまとまりました。

購入の実務やその後のやり取りは農家さん自身の手で進めてもらうよう連絡先を繋ぎましたが、実際に彼がちゃんと足を動かして資材を確保できるかは、後日現場を訪れて確かめる必要があります。

結局、今日の販売分は、私が手持ちで持っていたありふれた小さなポリ袋に急遽小分けして詰めることにしました。

怪我の功名でした。

綺麗にデザインされた既製品のパックと違い、素朴な小袋に詰められたキノコは、いい意味で高見えしません。ローカルの青空マーケットで見慣れている野菜たちと同じような佇まいになり、現地の住民にとってはむしろ敷居が低く、親しみやすいビジュアルに仕上がったのです。ハプニングが生んだ面白い発見でした。

2.5キロの需給の罠と、自走への果てしない壁

手元の小袋で8パックを作り、いざ販売へ。

結果は、8袋中6袋を売り切ることができました。残った2袋は自分用の晩ご飯として消費したので、数字としては完売ですが、この「2.5キロ」という収量は、実に扱いにくい絶妙なボリュームです。

レストランやスーパーといったB2Bの市場へ卸すには、あまりにも絶対量が足りず、供給の安定性も保証できません。 かといって、道行く個人に手売りするD2Cのスタイルだけで捌くには、少しロットが大きすぎて売り歩く時間とエネルギーを奪われてしまう。

この中途半端なスケール感をどう脱却し、安定供給のフェーズへと引き上げるか。

そして何より、私が横について口を酸っぱくして指示を出さなければ資材ひとつ調達できない今の体制で、果たして彼ら自身が自走できる日が来るのだろうか。 収穫の喜びと同じくらいの重さで、事業としてのシビアな問いがのしかかってきます。

ケニア初の長文メールと、10月に押し寄せるイベントの波

そんなもどかしさを抱えていた午後、プロジェクトの行く末を大きく動かすかもしれない、思わぬ連絡が舞い込んできました。

先日訪問して少し言葉を交わしていたある人物から、「自分たちの手でマッシュルームの栽培トレーニングを開催したいので、ぜひ協力してほしい」というオファーが届いたのです。意欲ある農家たちを複数人集めて本格的な講習を行い、将来的には生産者組合を結成して、まとまった収量を集荷して大口で売りさばいていこう、という構想でした。

もしこの話が現実のものとなれば、まさに喉から手が出るほど求めていた「大口の共同出荷モデル」が形になります。

しかし何より驚かされたのは、コミュニケーション方法でした。

ケニアで活動していて初めて、WhatsAppの短いチャットではなく、公式なE-mailを通じてメッセージが届いたのです。しかも、端正な英語で、プロジェクトにかけるビジョンや背景、情熱が、驚くほど丁寧な長文でびっしりと綴られていました。

この国でこれほど誠実な文章を受け取る機会は滅多にありません。 この人はキーパーソンになるかもと、画面を見つめながら感じました。

また、以前からパイプを作っていたKNCCI(ケニア商工会議所)からも嬉しい知らせが入りました。 来週10月2日、カカメガで開催される「ビジネスフォーラム」へのブース出展が決まりました。

手元のスケジュール帳を広げてみると、来週の商工会議所フォーラムを皮切りに、10月は第1週から第4週まですべての週に、外部イベントへの出展や自主企画の開催予定がびっしりと並ぶことになりました。怒涛のネットワーキング強化月間です。(3週目のイベントは不参加にするかもしれませんが。)

9月の間、種まきのつもりであちこちへ足を運び、関係各所へ連絡を入れ続けていた地道なアクションが、ここへ来て一気に実を結び、スケジュールの上へと雪崩れ込んできています。

自分の起こした波紋が外の世界へと広がっていく感覚は、刺激的で面白いです。

ただ、調子に乗ってアクセルを踏み込みすぎれば、あっという間に自分のキャパオーバーになるのが目に見えています。

手元のキノコの小袋をしっかりと見つめつつ、無理のないペース配分を意識しながら、勝負の10月に向けて頑張ります。