30分縮まった時間と、同僚の「絞り込む」ファシリテーション
午前中は、養蜂を学ぶ農家グループのトレーニングに参加しました。
前回のミーティングでは開始予定時刻から丸々1時間遅れてスタートしたため、どうなることかと見守っていましたが、今日は前回よりも30分ほど早くメンバーが集まり始めました。もちろん、定刻からはまだ30分遅れていますが、この地において「30分の短縮」は確実な進歩です。少しずつではありますが、時間を守る意識が芽生え始めている変化を前向きに捉えることにします。
研修では、BESA(蜂生態系分析)と呼ばれるフィールド観察の結果をもとに、議論が交わされました。
巣箱の周りに生い茂る雑草の草刈り、小型の黒アリの侵入を防ぐために架台の脚へ廃油を塗る対策、ヒマワリなどの蜜源植物の植樹。さらにグループディスカッションを通じて、技術不足、土地の狭さ、ハチへの恐怖心、防護具の不足、蜜蝋やプロポリスといった副産物の知識不足、初期資本の不足、そして不透明な市場ルートという「養蜂農家が直面する7つの主要課題」が洗い出されました。
(これらの課題は、MECEだと思いませんが、現状、大切なのは正しさではなく納得感)
これから本格的な雨季のシーズンが到来するため、巣箱の雨よけや周囲の環境整備を迅速に進めなければなりません。
ここで非常に勉強になったのが、進行を務める同僚のファシリテーションの手腕でした。
山積する課題と対策を前にして、彼女は参加者たちに向かってこう言い切ったのです。 「あれもこれも全部やろうとしないで。まずは、この1つだけを来週までにやろう」
現地の農家さんたちが、一度にたくさんのタスクを投げられると混乱し、結局何も手をつけずに動かなくなってしまう習性を、彼女は知っています。
だからこそ、優先順位を極限まで絞り込み、期日を明確に区切って、確実な一歩を踏み出させる。
絞られたアクションプランが次週どんな変化を生むのか、見届けるのが楽しみです。

沈黙を続ける菌床と、徒歩30分の切実なサバイバル
午後は、第2サイクルに入っているキノコ農家さんのプロットへ足を運びました。
あいにく農家さんは不在だったため、栽培部屋に入り一人で菌床袋の状態をチェックしました。
しかし、棚を見渡しても、キノコが一向に発芽してくる気配がありません。
時期としては、もうとっくに小さな芽が顔を出していてもおかしくないタイミングです。
このまま実をつけることなく終わってしまう「立ち枯れ」のリスクさえ脳裏をかすめ、胸の中に冷たい不安が広がります。
トレーナーに確認すると「最近は気温が高く乾燥が続いているため、発芽が遅くなっている」と説明してくれました。気候の影響と言われれば納得せざるを得ませんが、ひとつも芽が動いてくれない光景を前にすると、どうしても焦りが募ります。生き物を相手にする難しさと、祈るようなもどかしさを抱えながら部屋を後にしました。
その帰り道のことでした。
下腹部に、突如として激しい差し込み痛が走りました。
(……まずい、お腹が暴れている)
一瞬で冷や汗が吹き出します。しかし、現在地は農村のど真ん中。駆け込めるトイレがある事務所までは、歩いてゆうに30分はかかります。
通りがかるバイクタクシーに飛び乗ってしまおうかという誘惑が一瞬頭をよぎりました。
ただ、この悪路でバイクの振動を受け、臀部に余計な刺激が加わってしまえば、その瞬間にすべての均衡が崩壊し、取り返しのつかない惨事になることは火を見るより明らかでした。
乗ってはいけない。自分の二本の足で耐え抜くしかない。
腹部に意識を集中させ、深く、細く息を吐きながら、姿勢をピンと保って早足で歩道を進みます。
すれ違う村人たちから陽気に声をかけられますが、今日ばかりは笑顔を振りまく余裕など1ミリもありません。
引き攣った笑顔で、簡単な挨拶だけを機械的に返し、ひたすら前方の一点だけを見つめて歩き続けました。
・・・
限界ギリギリの綱渡りでしたが、なんとか無事に事務所のトイレへと滑り込み、難を逃れることができました。
いつもは大量のハエに嫌悪感を覚えるこのトイレも、今日だけはまるで救世主のように輝いて見えました。

バルサの快勝と、広がり続ける「初めて」の領域
夕方からは、奨学金支援組織「KESTES」のオンラインミーティングに参加し、広報業務の進捗について議論を交わしました。
そして夜は、楽しみにしていたサッカーのチャンピオンズリーグ観戦。
FCバルセロナが圧巻のゴールラッシュで大勝を収め、私の脳内にはドバドバとアドレナリンが溢れ出しました。
素晴らしい勝利の余韻に引っ張られるように、その勢いのまま深夜までデスク作業に没頭しました。
取り組んだのは、動画編集の作業です。
これまで動画の編集など本格的に触ったことがないため、カット割りやテロップのタイミングなど、出来上がった成果物のクオリティは贔屓目に見てもまだまだ発展途上です。
ただ、このケニアの地に来て、自分の手の中に新しい「初めて」の経験が次々と増えていく感覚は、純粋にとても楽しいものです。
動かない農家さんを動かす工夫、思い通りにいかない菌床、身体を張ったサバイバル、そして新しいツールの探求。
たくさんの感情の起伏を味わい尽くした面白い一日でした。