アリの猛威と、農薬を巡るジレンマ
朝からいちご畑へ向かい、日々のメンテナンス作業に取り組みました。
現場で頭を悩ませ続けているのが、依然として収まる気配のないアリの被害です。
観察していると、農家さんがしびれを切らして少し農薬を撒いてしまったとのことでした。気持ちは痛いほど分かります。せっかく実りかけた大切な作物が虫に食い荒らされていくのを黙って見届けるのは、耐えがたいものです。
ただ、農薬の散布は諸刃の剣でもあります。
受粉を助けてくれる大切なミツバチまで遠ざけてしまうリスクがあるため、オーガニックを志向する上でも、生態系を活かす上でも、安易な散布はあまり推奨できません。
化学薬剤に頼り切るのではなく、まずは物理的に虫たちの侵入ルートを遮断するため、土の上にマルチを綺麗に敷き直す作業を徹底しました。
害虫との攻防戦は一進一退ですが、明るい兆しも確実に現れています。
株を丹念に見て回ると、果実の数が以前と比べて確実に増えてきているのです。
形や大きさを揃え、安定した収穫量を確保するまでにはまだ時間がかかるかもしれません。
それでも、目の前にある課題を一つずつ潰し、少しずつ環境が改善されてきている確かな手触りがあります。
この地ではいつくばるように重ねている一つひとつの試行錯誤のデータは、決して無駄にはならない。
将来のこの地域の農家にとってかけがえのない財産になると信じて、丁寧な手入れを続けていきます。

託したりんごの定植と、早く明けてほしい乾季の大地
いちごの手入れを終えた後は、先日ワンブングアップルから持ち帰り、農家さんへ託していた、りんごの苗木の植え付けを行いました。
土を丁寧に掘り起こし、完熟した堆肥と肥料を満遍なく混ぜ合わせ、苗の根を痛めないように慎重に定植していきます。 仕上げに、乾燥を防ぐためのマルチを株元に敷き詰め、たっぷりと水を注ぎ込みました。
植え付けの手順や初期管理のポイントなど、今の私にできる限りのケアはすべて注ぎ込みました。あとは、この厳しい気候にしなやかに根を張り、元気に育ってくれることを祈るばかりです。
それにしても、畑の中を歩き回っていると、土壌の乾燥の激しさに息を呑みます。
踏み締める土はパサパサに乾ききっています。本格的な乾季の過酷さを、肌で、そして足の裏の硬さで実感させられます。早くこの厳しい乾季が明け、恵みの雨が大地を潤してくれないだろうかと、空を見上げながら願わずにはいられません。

オンラインの対話と、外へと広がる未来の視界
午後は任地の家に戻り、いくつかのオンラインミーティングに参加しました。
中には、これからの自分自身のキャリアや人生の方向性について深く考える機会もありました。
普段、ケニアの田舎で目の前の土や虫、農家さんたちの熱量とだけ向き合っていると、良くも悪くも視野がその場だけに集中してしまいがちです。 画面越しに外の世界の視点を取り入れ、自分が歩んできた道や、この任期が終わった先にどんな未来を描きたいのかを言葉にする時間は、脳の全く違う領域を刺激してくれました。
土を耕し、植物の命に向き合う午前。
そして、自分の未来の輪郭を思考する午後。
外の乾いた空気とは対照的に、心の中には新しくて前向きな風が吹き抜けていくのを感じた一日でした。