【ケニア派遣269日目】時間厳守の波紋と集団指導の壁。同僚のファシリテーションに学ぶ「伝える技術」

ケニア派遣269日目。養蜂農家グループの研修へ。遅刻を厳しく諌める同僚の言葉に、日々の関わりによる変化を実感。レコードキーピングの全体講義で「伝える難しさ」に直面する一方、身体を動かして惹きつける同僚のファシリテーションから普遍的な知恵を学びます。買い出し後に数時間だけ復旧した水道で、3週間ぶりの自宅シャワーを浴びて心身を整えた一日。

遅刻と時間厳守、同僚に生まれた小さな変化

今日は朝から、養蜂を学ぶ農家グループのミーティング兼研修に参加しました。

「10時開始だから遅れちゃうよ!」と、小走りで会場へと急ぐ同僚。

しかし、現場に到着して目に入ったのは、わずか2人のメンバーだけでした。普段は10人ほどが集まる集まりですが、残りのメンバーの姿はどこにも見当たりません。

結局、全員が揃って本格的にミーティングが始まったのは、開始予定時刻から1時間過ぎた11時でした。

時間通りに来た人が待たされて損をする構造は、どう考えても健全ではありません。日本人的な感覚と言われればそれまでですが、約束を守った人が報われない仕組みには違和感が残ります。

ただ、今日のミーティングの中で印象的だったのは、同僚が参加者たちに向かって何度も「次回からは必ず時間通りに来なさい」と強く指導していたことでした。

普段の待ち合わせで、私がいつも時間より少し早く到着し、定刻になると電話をかけている姿を彼女はずっと見ています。もともと責任感の強い人ではありますが、日頃の私の行動規範が少しずつ伝わり、影響を与えているのかもしれないと感じる場面でした。

「伝える」ことの難しさと、同僚のファシリテーション力

今回のミーティングでは、途中で時間を割いてもらい、私からメンバーに向けて「レコードキーピング」の重要性と種類についてレクチャーを行いました。

ミツバチや巣箱の状態管理、害虫や蜜源植物といった周辺環境の観察記録、資材や機材のアセット管理、そして何より売上とコストの収支管理。

しかし、前で話しながら参加者の反応を見ていると、正直なところ7割くらいには響いていない手応えでした。

個別の農家と1対1で向き合って話すのと、前提知識もモチベーションも異なる集団に対して全体講義をするのとでは、求められるスキルが全く違います。しかも、使用言語は英語とスワヒリ語です。

「知っていることを話す」のと「相手に届けて行動を変えさせる」ことの決定的な隔たりを痛感しました。

一方で、同僚のファシリテーション技術には目を見張るものがありました。

彼女は研修の進行中、単に知識を一方的に講義するのではなく、次々と参加者の身体を動かしていきます。

小グループに分かれての課題ディスカッションや発表、合間に挟み込まれる歌やダンス、軽快なコール&レスポンス、さらには容器の水を協力して移し替えるチームワークのゲームまで。

退屈しがちな座学を巧みにエンターテインメントへと変え、受講生を惹きつけ続けていました。

後で聞くと、「まだ立ち上がったばかりの初歩のグループだから、頭に詰め込む知識が多くて学校の授業みたいになってしまう。だからこそ意識して体を動かす仕掛けを入れている」とのことでした。

文化的なアウトプットの形は違えど、人を飽きさせず当事者意識を持たせるための構造的なアプローチは、相手が日本人であってもそのまま通用する普遍的な知恵です。同僚の現場を仕切る力から、学ぶべきことが本当にたくさんありました。

3週間ぶりの自宅シャワーと、流れ落ちる憑き物

午後、今日のマーケットデイに合わせて市場へ立ち寄り、新鮮な野菜を買い込んで帰宅しました。

台所で夕食の準備を始めようとしたその時、蛇口から水が出る音が聞こえました。

驚いて確認すると、完全にストップしていた水道が息を吹き返していたのです。

う、うれしい…!

例によって数時間だけの気まぐれな復旧でしたが、急いで手持ちのタンクやバケツへ限界まで貯水を行いました。そして何より、自宅のシャワーを浴びることができました。

先日のナイロビ遠征では温かいお湯を浴びることができましたが、自分の家で水浴びができたのは一体いつぶりでしょうか。おそらく、3週間ぶりくらいです。

頭から勢いよく水を浴びた瞬間、この数週間で知らず知らずのうちに肌や心へこびりついていた澱のようなもの、目に見えない憑き物が、一気に洗い流されていくような爽快感を覚えました。

蛇口から水が出る。体を清潔に保てる。

そんな当たり前の日常のありがたさを全身で噛み締めながら、明日からも頑張ります。