【ケニア派遣238日目】才能を咲かせる環境なき子どもたち。奨学金の限界と、最後の砦としての農業

ケニア派遣238日目。KESTESの家庭訪問で、学費が払えず学校を追われる優秀な候補生たちと面会。構造的な教育問題や、土地を持たない日雇い労働者の厳しさから「最後の砦としての農業」を考察します。夕方は農家不在のキノコ培地作りに葛藤を抱きつつ、自主ゼミでの言語化と、損をしたチャパティを笑って受け入れる等身大の夜を綴ります。

咲かせる環境のない才能と、教育の構造的な限界

午前中はKESTES(奨学金支援組織)の活動を行いました。 私の任地に住む奨学生の候補生たちの家庭状況を把握するため、経済状況のヒアリングと必要書類の回収に向かいました。

訪問したのは2件のお宅です。

1件目は、自家消費用の小さな畑しか持たない農家。 2件目は、父親が日雇い労働者として働き、母親は家で家事をこなす家庭。当然のように電気は通っておらず、連絡用の携帯電話すら所有していませんでした。

面会した学生は非常に成績優秀で、家でも熱心に勉強を重ねていることが伝わってきました。しかし、どうしても学費が払えず、学校から追い出されてしまっているのだと言います。

話を聞くほどに、胸の奥が痛みました。 彼らのように、確かな才能や情熱を持ちながらも、それを咲かせるための環境が与えられていない子どもたちが、この国にはどれほど多く存在するのだろうか。若年層の人口が多く活気に満ちているはずのケニアで、思うように経済成長が跳ね上がらない根底には、こうした「環境の格差」という構造的な要因があるのだと実感します。

同時に、私たちが関わっているKESTESというプログラムの限界についても、考えさせられました。

この支援は、選ばれた子どもたちやその家族からは心から感謝され、確実にその人生を劇的に変える光になります。 しかし、彼らはたまたま制度や人との出会いに恵まれた一握りの存在に過ぎません。圧倒的多数の子どもたちは、光が届かない場所で取り残されたままです。結局のところ、国の税金によって教員の給料が補償され、完全な教育無償化が実現されない限り、この根本的な問題が解決することはありません。

また、日々の活動で私と一緒に汗を流している農家さんたちが、「土地を相続して所有している」という事実がどれほど強烈なアドバンテージであるかも思い知らされました。ある程度の広さの土地さえあれば、工夫次第でどうにでも食べていくことができます。

しかし、土地を持たない人々は、外で日給300Ksh(約375円)の過酷な労働に従事し、日によっては無賃で働かされることすらあります。

この地域には、いわゆるオフィスワークやホワイトカラーと呼ばれる仕事はほとんど存在しません。小さなショップやレストランで働くか、農業をするか。初期投資や参入障壁の観点から考えても、農業という選択肢は、彼らにとって生存のための希望であり、生活を守る最後の砦なのだと痛感しました。

ちなみに、今日案内してくれたローカルの方は、驚くほど素晴らしい人物でした。 ケニアでは珍しいと言ったら失礼かもしれませんが、約束の10分前には集合場所に到着しており、素晴らしいホスピタリティで接してくれました。すれ違う村人が私に向けて「チャイナ!」と声をかけると、「彼は日本人だよ」と丁寧に訂正して気遣ってくれる。そんな温かい人柄に救われる思いでした。

紹介者の方。家にもてなしてくれました。

チャンスの前に立つ人と、チャンスさえ届かない子

乗合バスに揺られて15分。夕方からは任地に戻り、通常の現場活動へと頭を切り替えました。

今日は、キノコ栽培の第2サイクルに向けた培地作りです。 現場へ向かうと、すでに作業が始まっていました。同僚からは「2サイクル目はできる限り手を出さず、農家主体でやらせること。作業も手伝いすぎないように」と言われているため、私はあくまで指示に従う範囲内でサポートに回りました。

現場では、子どもたちが一生懸命に手を動かして手伝ってくれていました。

しかし、肝心の農家本人の姿がどこにも見当たりません。

午前中、学びたくてもチャンスさえ与えられない子どもたちの現実を目の当たりにしてきたばかりでした。だからこそ、目の前にビジネスのチャンスが落ちているのに、自ら拾おうとしない大人の姿に対して、やるせない気持ちが込み上げてきました。

恵まれた環境に慣れてしまうと、人はその価値に気づけなくなってしまうのだろうか。
言葉にならないモヤモヤを抱えながら、目の前の作業をサポートしました。

自主ゼミでの言語化と、2枚のチャパティ

夜は、定期的に開催している「農業関係隊員の自主ゼミ」に参加しました。

今日は私が発表を担当する番でした。大層なプレゼンをするのではなく、日頃の悩みや葛藤をそのまま先輩隊員たちに打ち明け、胸を借りる時間にさせてもらいました。

思考がまとまりきっていない部分もありましたが、温かい先輩たちの問いかけやアドバイスのおかげで、自分の中にあるモヤモヤや今後の課題が、言語化されていくのを感じました。 今日整理できた視点を踏まえて、明日からどんなアクションを取っていくべきか、改めて戦略を練り直してみようと思います。

色々な感情が交差し、心身ともにすっかり疲れ果てた一日の終わり。

夕食を作る気力も残っていなかったため、冷蔵庫にあるきのこマサラの残りと一緒に食べようと、帰り道にチャパティだけを購入して帰宅しました。

「3枚ください」と50Kshを支払い、家に戻って袋を開けてみると、入っていたのは「2枚」だけでした。

普段なら少しイラッとする場面かもしれません。けれど、今日はもう疲れすぎていて、感情を高ぶらせるエネルギーすら残っていませんでした。

暗い部屋の中で苦笑いしながら、手元にある2枚のチャパティをそのまま口に頬張りました。

理不尽も、モヤモヤも、小さな損も、全部まるごと飲み込んで。 今夜はしっかりと身体を休め、明日からまた私自身のペースで、目の前の現実に向き合っていきます。