30分歩いた先の「葬式」と、盗難というローカルのリアル
今日からはいよいよ、キノコ栽培の「第2サイクル」に向けた準備に取りかかろうと、強い意気込みを胸に、徒歩で約30分の道のりを歩いて農家さんのもとへ到着。
しかし、顔を合わせた瞬間に農家さんから告げられたのは、予想外の一言でした。
「これから葬式があるから、今日の作業は延期で」
……それなら家を出る前に電話一本で教えてくれればよかったのに。
30分かけて歩いてきたこちらの労力は、彼らの時間感覚の中ではサラリと受け流されてしまいます。まあ、これもまたケニアの日常です。
気を取り直して栽培部屋を確認すると、昨日の収穫量が極端に少なかった原因について、農家さんの息子さんから気になる話を聞きました。 彼いわく、「一昨日の段階では、もっとたくさん実がなっていたはず」とのこと。
つまり、誰かが部屋に入って勝手に収穫して持っていってしまった(盗まれた)可能性が浮上しました。
もし本当だとしたら、あまり気分の良い話ではありません。ただ、周辺の住民たちはここにキノコが栽培されていることを知っていますし、手に入りにくい珍しい食材だからこそ、目をつける人がいてもおかしくはない環境です。これからは部屋にしっかりと鍵をかけて管理してもらうようお願いをしておきました。
トラブルや想定外の出来事は絶えませんが、鍵を一つ増やすことでまた一つ管理レベルが上がる、と前向きに捉えることにします。
「農業は金になる」と語る青年と、若手グループの構想
手ぶらで戻ることになった帰り道、一人の青年から声をかけられました。
話を聞くと、彼は私のキノコプロジェクトの噂を聞きつけていて、「自分もキノコ栽培を始めてみたい」と熱っぽく語ってくれました。 現在はまだ学生のようですが、学校を卒業したら、農業一本で生きていくのだと意気込んでいます。
「だって、農業は金になるからね」
彼の口から出たその言葉は、とても頼もしく嬉しくなるものでした。
そのまま彼の自宅まで一緒に行き、栽培に必要な初期費用や必要な資材、温度管理の部屋作りについて、具体的な数字を交えながら細かく説明しました。 彼は現在まだ学業のシーズン中であるため、フルタイムで畑に張り付けないという時間的な課題はあります。それでも、何とかやりくりして挑戦したいという彼の目には、確かなやる気が宿っていました。
真面目で、自分の足で立とうとしている若い挑戦者は大好きです。
今のパートナー農家さんの息子さんや、今日出会った彼のような意欲ある若手男子を集めて、小さな「若手農家グループ」を結成できたら面白いのではないか、と議論しながらワクワクした思考が広がっていきました。 個人に依存するだけでなく、同世代のコミュニティとして熱量をシェアしながら競わせる。これからの活動に、また新しい楽しみな選択肢が増えました。
街にあふれる子どもたちと、「まだか」と催促される需要
昨日今日あたりから、ケニアの学校はいよいよ長期のホリデーシーズンに突入したようです。 そのため、街のあちこちに子どもたちの姿が溢れていました。
遠くの方から「ムズング〜!」と無邪気に手を振ってくる子。 見たことのない外国人の存在が珍しいのか、目を丸くしてじっと凝視してくる子。 声をかけようかギリギリまで迷っていたようで、すれ違いざまの最後の1秒で照れくさそうに挨拶してくる子。
通りを歩いているだけで、子どもたちの多様で素直な反応に出会えるのは、本当に微笑ましく、歩く疲れを忘れさせてくれます。やっぱり、子どもは純粋で可愛いものです。
午後は農業事務所に戻り、ボスに最近の進捗と今後の動き方を共有しました。その後は自宅に戻り、静かにデスクワークをこなしました。
今日一日だけで、街の人々や知人など計3人から「次のキノコは、いつ収穫できるんだ?」と尋ねられました。
「ごめん、今育てているところだから、もう少し待っててね」と伝えていますが、顧客を「待たせている」というこの需給のバランスは、ビジネスとして非常に健康的で、最高に良い状態です。
30分無駄に歩かされたり、盗難の陰に苦笑いしたりしながらも。
手応えのある需要と、未来ある若者との出会いが、私の胸の奥をしっかりと熱くしてくれています。
今日預けてもらった期待の重みを噛み締めながら。 次回確実に美味しいキノコを届けるために、明日もまたマトゥングの現場で、できる準備を一つずつ積み重ねていきます。