【ケニア派遣187日目】停電の暗闇で観るワールドカップ。アジア人差別と、ボーダレスな熱狂の裏にある現実

ケニア派遣187日目。ケニア人の友人宅で味わった、朝搾りたて牛乳のチャイとバナナの豊かな朝。帰宅後の断水と停電に苦笑しつつ、開幕したワールドカップ2026を停電の暗闇で観戦。スポーツが繋ぐ世界の温かさと、メキシコ人サポーターのアジアンヘイトから考える無意識の差別の根深さを綴ります。

雨水と朝搾りのチャイが教えてくれる豊かさ

昨晩は、ケニア人の方の自宅に宿泊させていただきました。

決して豪華な設備があるわけではない、素朴な家です。 生活用水は、屋根から溜めた雨水がベース。けれど、そこで過ごす時間に何一つとして困ることはありませんでした。それどころか、朝にはその場で搾りたての牛乳を使った温かいチャイと、甘いバナナをご馳走になり、とても豊かな朝の時間を過ごさせてもらいました。

物がないことと、心が貧しいことは、全くイコールではない。
ケニアの田舎にいると、その事実を何度も、肌に触れる温度で教えてもらえます。

お礼を伝えてマトゥングの我が家へ帰宅。
扉を開けた瞬間、案の定、断水×停電のダブルパンチが待っていて、少しだけ心が萎えかけました。でも、やっぱり自分の家が一番落ち着きます。

水が復活したタイミングを見計らって自炊をし、今週忙しくて見れておらず溜まっていたアニメをのんびり消化する。活動半年という上半期ももうすぐで終わり。下半期にやるべきことを頭の中で整理しながら、しっかりとリラックスできた、休日らしい休日を過ごすことができました。

ナイロビで買った七味でQOL爆上がり。

停電の暗闇で観る、もう一つのワールドカップ

さて、ついにサッカーのワールドカップが開幕しました。
そして今日は、日本代表の初戦。

私たち海外協力隊は世界中に散らばって活動しています。当然、日本の初戦の対戦相手であるチュニジアなどにも、同期や先輩の隊員たちが派遣されているわけで、そうした、国境を越えた繋がりを感じながら観る大会は、いつにも増して特別な響きを持っています。

参加国ほどの盛り上がりはないかもしれませんが、ケニア国内もしっかり盛り上がっています。テレビをつければ特集番組が数多く組まれています。

ただ、現地の人から聞いてとても面白いなと思ったのが、ケニアの人々は必ずしも同じアフリカ大陸の「南アフリカ」などを盲目的に応援しているわけではない、という事実でした。 先日の開幕戦でも、現地ではむしろメキシコを応援している人の方が多かったのだとか。アフリカだからアフリカを応援する、という単純な構図ではない現地のローカルな心理が垣間見えて、興味深い現象です。

都会のナイロビでは、在留日本人が一箇所にたくさん集まって大画面で賑やかに日本代表を応援していたそうです。とても羨ましかった。
私はといえば、停電した真っ暗な部屋で、小さな画面を前に、一人日本代表のピッチを見つめていました。

それでも、ピッチの上で泥臭く走っている同世代の選手たちの姿を見ていると、自然と身体の奥から元気が湧き上がってきます。

スポーツが繋ぐ世界と、無意識の境界線

最近の世界情勢に目を向ければ、イラン情勢においてようやく戦闘終結の合意がなされたというニュースが報じられたものの、依然として地球のどこかでは絶え間なく争いが続いています。

しかし、W杯に視線をうつせば、天皇陛下とオランダ王室の方々が並んで一緒にサッカーを観戦されている姿など、スポーツが持つ「世界を一つに繋ぐ力」を強く感じずにはいられません。国家や政治、民族の壁を取り払って、同じボールに一喜一憂し、肩を組んでボーダレスに熱狂できる。それは本当に素晴らしい、人間の知恵だと思います。

一方で、大会の華やかさの裏で、悲しいニュースも耳に届きました。
メキシコ人サポーターの一人が、アジア人に対する侮蔑的な人種差別行動を起こし、問題になっているという話題です。

日本で普通に生活しているとあまり自覚することはありませんが、一歩世界へ飛び出すと、私たちアジア人もまた、明確に差別をされる側の当事者になり得るのだと、ケニアでの日常も含めて強く実感します。

こうした他者への偏見や軽蔑は、多くの場合、悪意に満ちた意図的なものというよりは、歴史や育った環境の中で刷り込まれた「無意識レベルの行動」であることがほとんどです。だからこそ、恐ろしい。 私たち一人ひとりが、自分の無意識の振る舞いに対して、意識的に立ち止まり、考え、ブレーキをかけなければ、この境界線はいつまで経っても消えることはないのだと思います。

ちなみに、私の今回の個人的な応援国は、もちろん日本、そしてスペインです。

ケニアと大会開催地との時差の関係上、こちらのキックオフ時間は深夜23時から朝4時頃が多く、ヨーロッパの通常リーグを観るよりもさらに数時間遅い時間帯になります。 これからの1ヶ月半は、深刻な寝不足との戦いになるかもしれません。
体調を壊さないよう、観るべき好カードを上手く選定しながら、この世界最大の熱狂をしっかりと楽しんでいきたいと思います。

シンプルに面白い良い試合だった。