ベテランが語る「土」の真実と、正解のないキノコ栽培
今日はカカメガのタウンにいる、マッシュルームの種菌農家さんのもとへ。領収書を受け取るだけのつもりでしたが、せっかくの機会なので、私たちのキノコプロジェクトの現状や課題についてじっくりとディスカッションをさせてもらいました。
キノコの話にとどまらず、いちごなど他のプロジェクトについても色々と話を膨らませます。 彼は何十年もの間、ここケニアの土地で泥臭く農業を営んできた大ベテラン。だからこそ、地域ごとの土壌や気候のリアルな特性に関する彼の言葉は、どれもとても参考になります。
「ケニア国内でも、ブンゴマのエルゴン山や、ナイロビ近くのケニア山周辺は抜群に土壌が良い。ここカカメガ周辺は、そうした肥沃なエリアに比べると、どうしても収量が一段落ちてしまうのは避けられない。」
そんな土の現実をフラットに教えてもらい、自分たちのフィールドのポテンシャルとどう向き合うべきか、改めて考えさせられました。
貴重な話を聞かせてもらったお礼代わりに、彼のキノコ培地づくりの作業を少しだけお手伝いすることに。 滅菌済みの培地を袋に詰めていく作業ですが、順序や植菌の仕方が、私がこれまで学んできた方法とは随分と異なっていました。 彼自身、今でももっと簡単で、早くて、確実にできる方法を日々模索しながら、色々と実験を重ねているのだと言います。
栽培に、これが絶対という完璧な方法はない
いろんな先進的な農家さんの事例を学ばせてもらいつつ、私たち自身のやり方を信じて、マトゥングでもどんどん挑戦していこうという勇気をもらいました。
手先を動かしながら、ひょんなことから日本の「相撲(Sumo)」の話題に。 どうやら、日本の両横綱がパリ巡業をしている映像をどこかで観たらしく、「一体どうやったらあんなに体を大きくできるんだ?」と驚いていました。 私もうまく説明はできませんでしたが、日本の伝統である相撲が、こうしてアフリカの片隅にいる人にとっても「普通じゃない、特別なもの」として映っているのが新鮮で面白かったです。
あの独特のかっこよさや美学が、もっと海外の人にも伝わるといいなと思います。

大統領が来る大学と、日本とのスケール感の違い
その後、少し場所を移動して、昨日もお世話になった大学の教授のところへ挨拶に向かいました。
込み入った議論はしませんでしたが、現在進行形のプロジェクトの進捗を共有し、「また今後もぜひ協力させてほしい」と前向きな関係を繋いできました。
キャンパス内を歩いていると、何やらお祭り騒ぎのような大がかりな設営が行われていました。 話を聞くと、明日、この大学にルト現大統領が視察に来るらしく、そのための超大規模な準備の真っ最中でした。
スタッフに聞くと、なんと5千万円規模の予算をかけた一大イベントなのだとか。
会場には、ライブ会場を思わせる巨大なテントの下に、視界を埋め尽くすほどの膨大な数のパイプ椅子がこれでもかと並べられていました。
ただ大統領が視察に訪れるというだけで、大学ひとつがこれほどまでの大金とエネルギーをかけて熱狂的に準備をする。日本の首相がどこかを訪れるときの厳かだけど淡々とした空気感とは、根本的にエネルギーの質が違います。
やはり、この国における「大統領」という存在の持つパワーや象徴としての意味合いは、私たちの感覚とは全く異なるのだと、まざまざと見せつけられた気がします。面白い比較文化の体験でした。
その後は、カカメガのタウンで必要な資材の価格調査をして回りました。 ただ、なんとなく体の調子が優れず、少し這うような感覚になりながら、用事だけをなんとか急ぎ足で済ませて早々に帰宅の路につきました。
体が疲れていて、きっと目が吊り上がって、相当悪い目つきで歩いていたのだと思います(笑)。 いつもなら「ちんちょん!」だの何だのと無遠慮に声をかけてくるタウンの人々が、今日は驚くほどに、静かに私をスルーしていきました。声をかけられないのは楽でいいけれど、自分の表情の険しさを自覚して少し苦笑いしてしまいました。

政府や軍関係の施設などは写真撮ると、スパイだとかなんだとか言われることがあるので気をつけた方がいい見たおです。
暗闇のなかで語り合う、半年の節目とこれからのワクワク
マトゥングの我が家に戻り、ゆっくり体を休めました。
夜は、同じようにケニアで活動する同期隊員2人とオンラインで繋ぎ、お互いの近況をじっくりと話しました。
今週でケニアに着任して丸半年。 このハーフマークという絶妙なタイミングだからこそ、みんなそれぞれ、自分のやってきたことを見直しては、 「本当にこれでよかったのだろうか」と頭を抱えて悩んだり、 「次はこんな新しい仕掛けをやってみたい」とワクワクしたり。
抱えている葛藤も、未来への期待も、驚くほど同じでした。
答えの出ない暗闇を手探りで進んでいるのは、自分ひとりじゃない。
それぞれ全く違うフィールドで、全く違うセクターと向き合いながら、同じように歯を食いしばっている「戦友」の存在が、何よりの心強さでした。
今夜も、マトゥングの私の部屋には電気がありません。 真っ暗な静寂の中で、同期たちの温かい声と、ベテラン農家の「絶対の方法はない」という言葉が、頭の中で優しくリフレインしていました。
体調を万全に戻し、明日からはまた、私のやり方で一歩ずつ進んでいきます。