【ケニア派遣176日目】実習生の家庭訪問。言語の壁に感じる「置いてけぼり感」と、緑黄色社会が響いたケニアの夜

ケニア派遣176日目。将来に焦りを抱える実習生の実家を訪問。自宅でのキノコ・いちご栽培を説明するも、言葉の壁(ルヤ語)に阻まれる葛藤。一方で、お父さんの温かいおもてなしや日本の音楽(緑黄色社会)を通じた国境なき文化交流に、大切な気づきを得た一日。

実習生の未来と、言葉の壁へのもどかしさ

今日は、いつも一緒に頑張ってくれている実習生のお家を訪問することにしました。

道中、彼と色々な話をしました。 「トムさん(私)が来て、スケジュールを作ってくれないと俺はやることがなかったから、本当に助かっている」と話してくれた彼。 実は、実習期間は来月で終わり。その次の月からは、自分で新しい仕事を探さなければならないそうです。
「まだ結婚はしていないけれどパートナーがいて、結婚やこれからの子供のことを考えると、これ以上1秒も時間を無駄にしたくないんだ」 と真剣な眼差しで、そう将来への焦りを語ってくれました。

事務所にただいるだけでは仕事が降ってこないケニアの現状の中で、「トムがいてくれて本当に良かった」と言ってくれた彼の言葉に、活動への責任感がまた引き締まる思いでした。

そして彼は、自分の家の畑でもキノコやいちごの栽培に挑戦してみたいと言います。
今日はその方法を家族に説明してほしいと頼まれ、関係者に向けて説明を始めました。

しかし、ここで言葉の壁が立ちはだかります。 私の英語が、彼らにうまく伝わらない。
途中から「私が少し話す→実習生が現地語に訳す」というスタイルで進めることになりました。

すると、家族の皆は通訳である彼の話ばかりを聞いて、私の方を全く見なくなってしまいました。 会話はすべて現地のルヤ語(Luhya)になり、私はただその場に突っ立っている状態。強烈な「置いてけぼり感」に襲われ、正直、精神的にキツい時間でした。

それでも、想いやノウハウは通訳を通じて伝わり、前向きに検討してくれるとのこと。 さらに彼が以前、教育実習をした学校の農業クラブに「いちご栽培」を提案してみる、という新しいアイデアも生まれました。

言葉の壁にぶつかりながらも、こうして少しずつ、泥臭く活動の輪が広がっていくのを感じています。

「おもてなし」のウガリと、ケニアで響いた日本のメロディ

説明も終わり、そろそろ帰ろうとすると、彼のお父さんが私を呼び止めました。
「訪問者に、ご飯も食べさせずに帰らせるわけにはいかない」 と言って、ごちそうを振る舞ってくれることになりました。

見ず知らずの異国の人に対しても、温かく親切にもてなすこの精神。 もちろん、すべてのケニア人がそうではないかもしれませんが、この国にいるとこうした温かい利他主義に遭遇することが本当によくあります。 「効率」や「自分のこと」ばかりで一杯一杯になりがちな私たち日本人が、どこかに置き忘れてきてしまった大切な心を、お父さんの背中に思い出させてもらった気がしました。

食卓に並んだのは、ケニアの主食であるウガリ(メイズの粉を練ったもの)と、煮込まれた魚。 そして、香ばしい焼きメイズ(トウモロコシ)です。 醤油や塩があったらもっと最高だな……と心の中でこっそり思いつつも、彼らが「何もつけないのが一番美味い」と教えてくれたので、郷に従ってじっくりと噛み締めました。素材そのものの素朴な甘みが、じんわりと広がります。

食後は、お互いの携帯から好きな音楽を流し合う音楽会が始まりました。 日本の曲をいくつか流してみたのですが、「緑黄色社会」の曲が彼の好みにヒット!ケニアの田舎の一軒家で、日本のポップスが流れて盛り上がる不思議で面白い瞬間でした。

ちなみに、実習生はナイジェリアの音楽がお気に入りだそう。タンザニアの音楽も有名だけれど、スワヒリ語なので、自分はよりグローバルな英語で歌われているナイジェリア音楽の方が好きなのだと、意外なこだわりも教えてくれました。

家族に日本の独特な文化や、高級フルーツの驚くべき価格差などの話をすると、目を丸くして喜んで聞いてくれました。 置いてけぼりの寂しさから一転、とても幸せな文化交流の時間になりました。

鳴り止まない胃痛と、帰宅後のインフラの洗礼

温かい気持ちで、マトゥングの我が家に帰宅。

ただ、昨日から日中にかけて少し痛んだお腹がまだ本調子ではなく、地味にキュルキュルと痛いまま。作業を少しこなしつつ、今夜は軽く食べて早く寝ることにしました。

しかし、追い打ちをかけるように、帰宅してから全く「水」が出ません。最近、本当に断水が多すぎます。 水がないというのは、生活において想像以上にきつい。トイレも流せない、溜まった食器も洗えない。 真っ暗な停電にも慣れてきたつもりでしたが、この水がない不便さだけは、何度経験してもかなりのストレスです。

インフラに振り回され、お腹を抱えながら、それでも実習生の熱意や、お父さんの温かいウガリに救われた一日。

また明日から水が出ることを祈りつつ、泥臭く、できることから一歩ずつ活動を進めていきます。