フットサルで肺をいじめ抜く、至福の朝
午前中は、ナイロビの日本人サッカー会が主催するフットサルへ行ってきました。
今回で5回目?くらいの参加になります。毎週開催されていることもあって、集まる皆さんはとにかく動ける。メンバーは固定の人もいれば、新しく入れ替わる人もいて、毎回新鮮でとても面白いです。
肝心の私はというと、最初の1時間は標高約1,700mのナイロビの薄い空気も相まって、正直「肺が痛い……」と白目を剥きそうになりながら必死に走っていました。 それでも、1時間を過ぎたあたりから身体が少しずつ順応してくるから不思議なものです。 やっぱり、仲間とボールを蹴るのって、シンプルにとても楽しい!

カリオカーマーケットに漂う、職人の誇りと「シンナー」の影
フットサルで心地よい疲労感を抱えたまま、午後はナイロビの「カリオカーマーケット(Kariokor Market)」へ足を延ばしました。
ここは「ものづくりの街」として非常に有名なエリア。一歩足を踏み入れると、レザークラフトや、車の廃タイヤを器用に再利用して作られる頑丈なサンダル(アカラ)など、職人たちがそれぞれのブースで工夫を凝らした製品がずらりと並んでいます。 細部を凝視すると、日本の精緻な製品と比べて「ん……?」と首を傾げたくなるような大雑把な部分もありますが(笑)、全体としては手仕事の温かみと工夫が詰まっていて、とても素敵な空間でした。

ただ、市場の奥へ進むにつれて、鼻を突く強力なシンナー(革やゴムの接着剤)の匂いがきつくなり、歩き回るのが少々大変でした。 ここで毎日朝から晩まで働いている職人たちの健康状態が、他人事ながら心配になってしまいます。実際ケニアでは、こうした作業現場からシンナーが流出し、ストリートチルドレンたちがそれを吸引してドラッグ化してしまうという、深刻な社会的側面もあります。
現地の職人のひとりに話を聞いてみました。 彼は高校を卒業した後、このカリオカーに飛び込み、働きながら叩き上げで技術を身につけたのだそう。 ケニアにはもちろん職業訓練などの専門学校もありますが、結局のところ、こうした泥臭い「実践(OJT)」の現場で体得するリアルなスキルこそが、最も生きていくための武器になるのだと、彼の力強い眼差しを見て納得しました。

カッピング初体験と、世界の飲料バリューチェーンを考える
次に向かったのは、コーヒーの「カッピング」イベント。
カッピングという言葉自体、私にとっては初体験でしたが、とても面白い世界でした。
今回は、今注目されているアジアのスペシャリティコーヒーを集めたイベントで、中国、インドネシア、ラオスなど、普段なかなかお目にかかれない地域の豆が並んでいました。 最近でこそ日本国内でもコーヒー栽培のニュースをちらほら耳にしますが、アジアは現在、コーヒー市場において最も急速に成長しているエリアなのだそうです。
イベントの解説で興味深かったのが、「アジアは、生産地と巨大な消費市場との(物理的・心理的)距離が非常に近い。これが、アジアのスペシャリティコーヒーが急伸している最大の要因である」という話でした。

この話を聞きながら、頭の中で「世界の飲料トレンド」に想いを馳せていました。
例えば、ここケニア。 世界最高峰の品質を誇るコーヒー豆の生産国でありながら、実は現地ではコーヒーはほとんど飲まれません。カフェは一部のアッパー層向けにしかなく、一般市民が日常的に愛飲しているのは、圧倒的に「チャイ(茶)」です。植民地時代の歴史の名残りもありますが、生産国でありながらローカルの消費文化が育たない典型例と言えます。
また、最近では世界最大の生産国ブラジルでコーヒー価格が高騰し、ブラジル国内のローカルの人々にとって、自国生産のコーヒーさえ手が出ない「高級品」になってしまっているという歪みも起きています。
一方で、世界的な大ブームを巻き起こしている日本の「抹茶(Matcha)」。 これは本来、日本という極めてドメスティックなローカルで消費されていた文化が、グローバルバリューチェーンの頂点に乗り、「健康的でプレミアムなプレミアム飲料」として世界中で再定義された結果です。
こうして見ると、世界の飲料市場は「誰が作り、誰がどう価値を認めて消費するか」というバリューチェーンのパワーバランスの上に成り立っていることがよく分かります。
「生産国で消費されないコーヒー(ケニア)」
「高騰して自国で飲めなくなる生産国(ブラジル)」
「生産と消費がダイレクトに接近し、急伸する新興地域(アジア)」
「ローカルの伝統をグローバルなブランド価値に昇華させた日本(抹茶)」
これらはすべて、私たちがこれから「何を育て、誰に、どう届けるか」という農業ビジネスをデザインする上で、とても重要なヒントをくれている気がします。

……と、頭の中では大層な分析を繰り広げていた私ですが、実際のカッピングはというと、スプーンで音を立ててコーヒーの香りと味を確かめるものの、正直なところ「違いがほとんど分からない」というのが本音でした(笑)。
多少の個性は感じられても、「何がどう素晴らしいのか」を言語化するのは本当に難しい。
そもそも私、カフェインに人一倍敏感で、午後に飲むと夜眠れなくなるし、朝に飲むと午前中は何度もトイレに駆け込む羽目になる体質。この奥深いコーヒーの世界に入り込むには、私の胃腸と自律神経には少しハードルが高すぎるようです。
お酒の味はすごく好きなのにアルコールにはとても弱いし、どうやら「飲み物の世界」は、私にとって片思いの連続のようです。ちょっと切ない。

ケニアワインと、違えど愛すべき「戦友」たちとの夜
それでも、夜は幸せな時間が待っていました。
友人たちと一緒にキッチンに立ち、ペアリングのご飯をワイワイ手作りしながら、ケニア産のワインを開けました。
ケニアに来てから、特に多くの時間を一緒に過ごしている2人。 お互いに、持っている個性も強みも、性格も全く違います。それぞれが自分の信念を持っていて、ものすごい努力家で、いつも刺激をもらっています。 活動のジャンルも違うし、きっとこの先歩んでいくキャリアも、全く別の方向に向かっていくのだと思います。
けれど、この広いケニアという国で、同じ熱量を持って活動し、こうして一つのテーブルを囲んでいる。この特別な偶然と絆は、日本に帰ってからも、この先何年経ってもずっと大切にしていきたいなと、ワインの酔いも手伝って心から思った夜でした。
今日も身体を目一杯動かし、頭を使い、最高の仲間と美味しいご飯を食べる。 そんな、この上なく愛おしい1日でした。

ケニア産はさっぱりしていて、食事のペアリングとしては良かったです。