【ケニア派遣327日目】失敗を繰り返さないために。農業と社会に共通すること

ケニアでのきのこ栽培準備と、ナイロビで起きたビル倒壊事故。避けられない失敗と防げる失敗の違いから、農業や社会が経験を振り返り、同じ過ちを繰り返さないために必要なことを考えます。

衛生に注意して植菌を行う様子。

できることを、最大限やる

今日もきのこの準備の続きです。

今回は、コンタミ(雑菌やカビなどの混入)を避けるため、衛生管理には細心の注意を払いました。

ところが、作業を進める中で、種菌自体にすでにカビが混ざっているものも確認できました。

これは、こちらではどうしようもありません。

どれだけ衛生管理を徹底しても、最初から問題があるものを使ってしまえば、失敗する可能性はあります。

どうしようもないことは、どうしてもあります。

だからこそ、自分にできることは最大限やる。

農業と向き合って1年弱。
これは、農業を通じて学んだ大切なことの一つです。

まさに「人事を尽くして天命を待つ」ということなのだと思います。

結果を完全にコントロールすることはできません。それでも、結果を少しでも良いものにするために、できることを積み重ねる。最後は、ある程度、自然に委ねるしかありません。

コンタミしているきのこの種菌

同じ失敗を繰り返す社会

作業中、農家さんたちといろいろな話をしていました。

その中で興味深かったのが、先日ナイロビで起きたビルの倒壊事故についてです。

日本の一部メディアでも報じられていましたが、10月23日、ナイロビのイーストリー地区で建設中のビルが倒壊しました。

現場では救助活動が続き、犠牲者や行方不明者も出ています。
事故から時間が経過した現在も、被害の全容や原因の究明が進められています。

この事故について、農家さんたちが話していたのは、今回が初めてではないということでした。

過去にも同じような事故が起きている。
それなのに、しばらくすると忘れられ、また同じことが繰り返される。

問題は、事故が起きることだけではなく、そこから学ばずに繰り返してしまうことなのだと。

本当にそのとおりだと思いました。

なぜ、同じ事故が繰り返されるのか

こうした事故が起きると、建築基準を守らなかった業者が悪い、行政の監督が不十分だった、汚職があったのではないか、といった話になります。

もちろん、個々の責任を明らかにすることは必要です。

ただ、そこで誰か一人を悪者にして終わらせても、根本的な解決にはならないと思います。

では、なぜ同じような事故が繰り返されるのでしょうか。

ケニアのように急速な都市化が進む国では、人口流入や住宅需要の増加に対して、建設のスピードが求められます。ナイロビでも高層ビルが次々と建設され、限られた土地を有効活用しようとする動きがあります。

建物を早く完成させ、早く貸し出し、投資を回収したい。
開発する側には、そうした経済的な動機があります。

一方で、建物の安全性を確認するには、設計の審査、施工中の検査、専門家による監督、完成後の確認など、多くの手続きが必要です。

ここで問題になるのが、建設のスピードと、それを管理する制度の実行力とのギャップです。

法律や基準が存在していても、それを現場で確認する人員や予算が足りなければ、十分な監督はできません。行政の担当機関が複数に分かれていれば、責任の所在が曖昧になることもあります。

さらに、許認可をめぐる汚職や不透明な取引があれば、本来止められるはずの工事が進んでしまう可能性もあります。

もちろん、今回の事故について、こうした要因が直接の原因だったと決まったわけではありません。実際の原因や責任の所在は、調査を待つ必要があります。

ただ、こうした構造的な問題があるとすれば、事故が起きたときに現場の作業員や施工業者だけを責めても、また別の場所で同じことが起きるかもしれません。

実際、AFPの報道では、ケニアの建築物検査に関する調査で、監査対象となった建物の87%が基準を満たしていない、あるいは必要な承認を得ていなかったとされています。もちろん、これは全国すべての建物を調べた数字ではありません。それでも、個別の事故だけでは片付けられない問題があることを示しています。

つまり、必要なのは事故の原因を特定するだけでなく、なぜその原因が生まれたのか、なぜ防ぐことができなかったのかまで考えることなのだと思います。

歴史から学ぶということ

これは、ケニアに限った話ではありません。

日本でも、過去の災害や事故から多くの教訓を得てきました。しかし、時間が経てば記憶は薄れます。担当者が変わり、組織が変わり、当時の経験を知らない人が増えていきます。

だからこそ、経験を記録し、検証し、仕組みとして残していく必要があります。

誰が悪かったのかを追及することも大切ですが、それだけでは不十分です。

なぜそうなったのか。どんな条件が重なっていたのか。どうすれば次は防げるのか。

そうした分析と反省がなければ、同じ失敗は形を変えて繰り返されるでしょう。

今日のきのこの作業でも、前回の失敗を踏まえて衛生管理を見直しました。
それでも、種菌自体にカビが混ざっているという、自分たちではどうにもできない問題は起こります。

それでも、できることを最大限やる。
そして、失敗したときには原因を振り返り、次に生かす。

農業も、社会も、結局は同じなのかもしれません。

人事を尽くすこと。
そして、歴史から学ぶこと。

そんなことを改めて考えた金曜日でした。

ケニアの綺麗な空
雨季は14-5時から雨が降り出します。今日も外干ししてベットシーツをびしょ濡れにしてしまいました。
過去から学ぶの大事だよねとか言いつつ、自分は何度も同じことを繰り返してしまう。己の愚かさを感じます。