レストランからの注文と、農家の「売る負担」を減らす設計
今日はレストランからまとまったキノコの注文が入っていたため、早朝から収穫のために農家さんのもとへ向かいました。
久しぶりに顔を合わせた農家さんでしたが、表情にはまだやる気が残っていました。
栽培に対するモチベーションが途切れていないことを確認できたのは、素直に心強い収穫でした。
しかし、最大のボトルネックは「販路」の一点に尽きます。 栽培技術や日々の管理はある程度形になりつつあるからこそ、彼ら農家自身が慣れない営業活動に奔走してすり減るのではなく、作れば自然と売れていく流通の仕組みを整えてあげたい。
彼らが余計な営業のストレスを抱えずに栽培に専念できる環境をどうデザインするか。
0→1から10→100へ――100人の農家と1,000万シリングの野望
事務所へ戻った後は、その安定した販路開拓も見据えた、キノコプロジェクトのスケールアップに向けた戦略ミーティングを行いました。
参加したのは、農業事務所長(SCAO)、意欲的なコミュニティの代表者、そして担当のワードオフィサー。
机を囲み、およそ1時間半にわたってディスカッションを行いました。
議論の末、来月末を目処に、地域のやる気ある農家グループのリーダーたちを一堂に集め、集中的な栽培トレーニングを実施する方針が固まりました。そして、彼らが実際に栽培をスタートさせたら、個別に売り歩くのではなく、収穫物を一括で集荷して「まとめて大口で出荷する」という共同出荷モデルを立ち上げます。
トレーニングを開催すること自体は、おそらくそれほど難しくありません。
本当の勝負どころは、講習を受けた農家たちが、自ら少額の初期投資とリスクを引き受けて、実際に栽培のアクションを起こしてくれるかどうかです。そこは、トレーニングの場において、私自身がどれだけ説得力のあるプレゼンテーションを展開し、彼らの当事者意識に火をつけられるかにかかっています。
販路に関しても、まとまったロットさえ安定して確保できれば、ホテルや都市部を含めた大口の引き取り先を開拓できるという見通しが話し合いの中で共有されました。 私としても、共同出荷の出口戦略が整うのであれば全精力を注ぎ込んで伴走したいですし、来年はこの販路の確立と拡大にリソースを集中投下するつもりです。
そのためには、まず何よりも「このプロジェクトを始めれば、確実に現金が稼げる」という明確な成功モデルを、今いる農家さんと一緒に完成させなければなりません。
これまでの歩みで、何もない0→1の立ち上げは手探りながら形になってきました。
今は、その種を育てて1から10へと広げていくフェーズです。
そして来年には、それを一気に10から100のスケールへと跳ね上げたい。
マイルストーンとして見据えているのは、100人の農家を巻き込み、年間で少なくとも1,000万円を生み出すことです。
状況に応じて数字の微調整は入るとしても、こうして関係者と膝を突き合わせて議論を重ねるなかで、具体的な定量目標を共有できる段階までプロジェクトが進んできた事実に、胸の奥が熱くなります。
事務所の掃除がくれた味方と、対話から落ちてくる「生きた検索ワード」
会議の中で、事務所長から「オフィスとしても、やる気のある農家を探し出して集める部分ならバックアップできる」と、頼もしい言葉をもらいました。
こうして事務所が味方になって背中を押してくれるのは、単に事業計画が魅力的だからという理由だけではありません。日頃から事務所の掃除を率先して引き受けたり、肥料の配布作業を手伝ったりと、自分のメインプロジェクトとは直接関係のない細かな雑務にも、一人の同僚として一生懸命向き合ってきたからこそだと実感しています。
損得勘定抜きで差し出してきた小さな手助けの積み重ねが、いざという時の信頼関係となって手元に返ってくる
人間関係の基本であり、最も確かな財産です。
また、今日のディスカッションの最中にも、現場を動かすための有益な知恵がいくつも飛び出してきました。
「キノコは、肉に比べて火が通る時間が圧倒的に早い。だから調理に使う炭(ガス)の消費量が劇的に少なくて済み、家計の燃料代を大幅に節約できる」
現地で日々の家計をやりくりしている当事者ならではの、強力な訴求ポイントです。健康や栄養という抽象的な価値だけでなく、「炭の代金が浮く」という即物的なメリットは、ローカルの主婦層の心を動かす強いフックになります。
さらに、ケニアのスーパーマーケットにおけるキノコ流通を攻略する上で、「MGAK(Mushroom Growers Association of Kenya)」という組織が重要なパイプになるという情報も耳に入ってきました。
人とのリアルな対話からこぼれ落ちてくる生きた情報は、本当に貴重です。その情報が正確かどうかは、その場で判断できなくても構いません。大切なのは、自分一人で画面に向き合っていては絶対に辿り着けない「新しい検索ワード」や「次の質問のフック」が、対話を通じて手元に手に入ることです。こうした偶発的な気づきに触れられる対話の時間を、これからも大切に重ねていこうと思います。

8時から22時までの疾走――何もない0から仕事を作った自分へ
午後は休む間もなく、マーケットに出てキノコの販売を行い、Agrovet(農業資材店)へ立ち寄って必要な資材を買い揃えました。 我が家へ帰宅した後はデスクに座り、商工会議所のビジネスフォーラムに向けたプレゼン資料の作成に没頭しました。
移動のバスの中でもスマートフォンを片手に各方面の関係者へ連絡を入れ、調整する。 時計の針を確認すると、朝の8時に家を出てから夜の22時に至るまで、自炊のためにキッチンに立っていた時間を除いて、ほぼノンストップで手を動かし続けていました。
赴任した当初は、決まったオフィスも、あらかじめ用意された仕事も存在せず、何から手をつければいいのか途方に暮れていたはずです。それが今日は、10時間以上走り回っても時間が足りないほど、自分でゼロから創り出した活動でカレンダーがびっしりと埋め尽くされている。
何もないゼロの更地から自分の仕事を作り出して、ここまで濃密に忙しくできている自分、なかなか偉いんじゃない?
なんて。たまにはそんなふうに、自分自身の歩みを素直に認めてあげてもいいかなと思います。
しかし明日起きたらまた気を引き締め直して、頑張ります。

ホスピタリティがいいから儲かっているのか。儲かっていらホスピタリティがあるのか。