軽くなった菌床と、菌も生き物であるという実感
月曜日、新しい1週間の始まりです。
朝一番でキノコ農家さんのもとへ向かい、収穫を行うと同時に、栽培部屋の整理に取り組みました。
本格的に始まる第2サイクルに向けて、新しい菌床ブロックを迎え入れるためのスペースを空ける作業です。
棚から古い菌床を運び出そうと両手で持ち上げた瞬間、その「軽さ」に目を見張りました。
仕込んだ当初は、水分と培地の重みでずっしりと手応えがあったブロックが、今は驚くほどフワッと軽くなっているのです。
キノコたちが成長する過程で、中の水分を吸い上げ、培地の栄養を最後の一滴まで食い尽くした証拠でした。
小さな白い菌糸の広がりから始まったものが、環境の熱や水分を取り込み、自らの命を繋いで果実を実らせ、役目を終えていく。
菌もまた、呼吸し、命を燃やす生き物である。
当たり前の事実ではありますが、スカスカに軽くなった培地の感触を通じて、改めてその生命力をリアルに実感した瞬間でした。
「後から楽になる」丁寧さと、農家の大雑把さの溝
作業を農家さんと一緒に進めるなかで、彼らの手つきや所作の「大雑把さ」に意識が向いてしまう瞬間がありました。
例えば、植え付けた日や袋を開封した時期、菌床の重さ、まだキノコが生えてくる余力があるかどうかで、棚の段や並びを細かく分けて管理すること。 あるいは、いちごの作業でも、後々の生育に響かないように根や株を傷つけないよう慎重に扱うこと。
私としては、今の段階でほんのひと手間をかけて綺麗に仕分けをしておけば、後々の収穫や日々のモニタリングが圧倒的に楽になると分かっているからこそ、細かな配慮を提案しています。
しかし、彼らはどうしてもガツガツと力任せに、大雑把に作業を進めてしまいがちです。
不要なこだわりであれば押し付ける必要はありません。
ただ、長期的な生産効率や品質を守るための基礎的な管理だからこそ、この「見ているタイムスパンの違い」をどう埋めていくべきか、もどかしさが頭をかすめます。
無理にやり方を矯正しようと焦るのではなく、丁寧な管理がもたらす実際の結果の差を、少しずつデータとして見せていくしかないのだと思います。

「You’re one of us」ー8ヶ月で変わった境界線
午前中の作業を終えて農業事務所に戻ると、政府から新しくひまわりの種と肥料が届いていました。
地域の農家たちへ向けて、これらをどう公平に、効果的に配布していくか、オフィサーたちと机を囲んでディスカッションを行いました。
その議論の最中、いつも一緒に現場を回っている同僚オフィサーが私に対して言ってくれたのです。
「You’re one of us」
さらに、最近は外の現場へ出た時にも、周囲の人々に対して「彼は日本から来たボランティアで、私の同僚なんだ」と、ごく自然に紹介してくれる場面が増えてきました。
この何気ない言葉が、心底嬉しいです。
赴任した当初は、どこへ行っても「日本から勉強に来た学生」として扱われたり、どこか壁のある「外側の人間」として見られたりすることが日常茶飯事でした。 もちろん、今でも外国人としての視線がゼロになったわけではありません。
それでも、8ヶ月という月日を重ね、同じオフィスで言葉を交わし、同じ現場に向き合ってきたからこそ、彼らの中で私という存在が「外部のゲスト」から「対等な同僚」へと、確実にシフトしている。
言葉の端々に滲むその信頼の温度に、これまでの歩みが報われるような温かい充足感を覚えました。
命を燃やせ。無限列車がくれた新しい活力
帰宅後は、身体をしっかりと動かすために1時間のトレーニングに集中しました。
自重で筋肉に負荷をかけ、大量の汗を流すことで、頭の中に溜まっていた微細なモヤモヤを綺麗に発散させていきます。
作業中のBGMとしてアニソンを流していたところ、ふと無性に見たくなり、映画『鬼滅の刃 無限列車編』を再生しました。
煉獄さんの放つ圧倒的な熱量と、「心を燃やせ」という力強い言葉。
画面から溢れ出る真っ直ぐな意志に触れているうちに、胸の奥底からグツグツと新しいエネルギーが湧き上がってくるのを感じました。
軽くなった菌床が教えてくれた命の営み、そして仲間として受け入れてくれた同僚たちの温かさ。
明日からも、心を燃やしながら、目の前にある一つひとつの現場に向き合っていきます。
