ポジティブな締め切りが引き出す、手作業の躍動
今日は、いちごを一緒に育てているパートナー農家さんのもとへ足を運びました。
現在は学校が休みのホリデーシーズンということもあり、普段は教師として教えている彼女の夫や、子どもたちも自宅に揃っていました。
作業の合間、年内に控えているいくつかの計画について共有をしました。
確定とまではいかないものの、日本からの視察訪問、農家を集めたフィールドデイ、そして10月のファーマーズマーケットという、3つの大きなマイルストーンが年内に控えていること。
そして、そのゴールから逆算して「いつまでに、何を終わらせておくべきか」というスケジュールを伝えたところ、効果は劇的でした。
話を聞いた夫と家族は、すぐさま腕を捲り上げ、その日のうちに新しいキノコハウスの建築作業に着手してくれたのです。
「いつかやる」「ゆっくりやる」という言葉で先延ばしにされがちなケニアの現場において、このスピーディーな行動力は驚くべき変化でした。
よく考えてみれば、これはケニア人に限った話ではありません。
日本人を含め、どんな人間であっても「明確な締め切り」が存在しないタスクに対して、本気でアクセルを踏み込むことは難しいものです。
だからこそ、ただ頑張ろうと精神論を解くのではなく、ポジティブな目的を伴った明確なマイルストーンを設定すること。 自分自身はもちろん、同僚や農家さんたちの背中を前向きに押すために、意図的にデッドラインを設計していくことの重要性を痛感しました。
骨組みを組み立てていく彼らの姿を見ていると、身体の使い方や道具を扱う手つきが驚くほど滑らかで、洗練されていることに気づかされます。素朴でプリミティブな作業でありながら、無駄のない身体の動きには、見惚れてしまうような美しさがありました。

ギャンブルの影と、教育者が語る「投資」の真理
建築の汗を流しながら、夫と様々なテーマについて言葉を交わしました。
その中で深く印象に残ったのが、現在ケニアの若者や子どもたちの間で猛威を振るっている「スポーツベッティング」の話題でした。
スマートフォンの普及に伴い、サッカーの試合結果などに小額から賭けられるサービスが急拡大しています。ケニアの法律(BCLBの規定)では、18歳未満のギャンブル参加は明確に禁止されており、メディア広告の制限やモバイルマネーでの年齢認証なども導入されています。
しかし現実には、大人のスマートフォンやIDを借りたり、街頭店舗での確認が形骸化していたりするため、中高生が容易にアクセスできてしまう構造的な穴が存在します。
特に深刻なのは、生徒たちが親から託された大切な学費に手を出して使い込んでしまうケースが後を絶たないことだと話していました。若者の情熱や未来が、一瞬のギャンブルによって奪われていく現状は、非常に根深い社会問題となっています。
学校で教壇に立つ彼自身、この問題に対して強い危機感を抱いていました。
「一獲千金を狙うギャンブルにお金を突っ込むくらいなら、自分の足元にある畑に投資しなさい」
彼は日頃から、家族や子どもたちに対してそう繰り返し伝えているのだそうです。
確実な成果を保証されないギャンブルではなく、手と頭を使って価値を生み出す「投資」へお金と時間を配分すること。彼のその言葉には、厳しい現実と向き合う教育者としての誠実さと頼もしさが宿っていました。
ボディビルに学ぶ逆算の美学と、自分への誓い
最近、私の中で新しい知的な関心が芽生え始めています。
それは、「ボディビル」の動画を鑑賞することです。 トレーニングのプロセスや、ステージ上でのパフォーマンス動画を見ていると、それが高度な「スポーツ」であり「科学」であることを思い知らされます。
大会という絶対的なマイルストーンから逆算し、摂取する栄養素やPFCバランスを管理し、日々のトレーニングメニューを緻密に組み立てていく。
人によって異なる骨格や筋肉の付き方を客観的に分析し、最短ルートで身体をデザインしていくロジカルなアプローチは、とても興味深いです。
そして何より、常人には真似できないほどストックに自分を追い込んでいる選手たちが、インタビューや対話の場では驚くほど謙虚で、他者へのリスペクトに満ちている点に強く惹きつけられます。極限まで自己と向き合った人間だけが持つ、独特の強さと優しさに美しさを感じます。
彼らのプロフェッショナルな姿勢にすっかり感化されました。
ここマトゥングには立派なジムもトレーニング器具も存在しません。しかし、自分の身体一つあればできる自重トレーニングから、日々の身体のメンテナンスを意識していこうと思います。
目標から逆算して、今日できる一歩を正しく積み重ねること。
農家さんの家で立ち上がったキノコハウスの骨組みと、身体を鍛える決意を胸に抱いて。 明日からも頑張ります。