【ケニア派遣240日目】カタツムリの猛威とオーガニックの壁。プロの大工が建てる防鳥ネットとボスが見た私の足跡

ケニア派遣240日目。事務所長(SCAO)を案内し、1時間以上歩いて現場を視察。「私たちより地域を知っている」と笑われるほど根を張った実感を抱きます。きのこの滅菌作業着手を見届けつつ、いちごのカタツムリ被害からオーガニック栽培の難しさを痛感。プロの大工による防鳥ネット建設と、食材との距離が近い1日2食の豊かな暮らしを綴ります。

ボスと歩いた1時間と、地域に根を張る足跡

今日は事務所のボスであるSCAO(Sub-County Agricultural Officer)が私の活動先を視察したいとのことで、現場の案内を行いました。

畑や栽培部屋を順番に巡るなかで、合計して1時間以上も彼女を歩かせてしまうことになりました。それでも、移動の道中でプライベートのことから、プロジェクトついて、じっくりと密な対話を重ねることができたのは大きな収穫でした。

きのこのプロットへ向かうと、農家さんがすでに第2サイクルに向けた培地の「滅菌作業」を進めてくれていました。 時間はかかりましたが、自分たちの手で工程を進めてくれている姿を見られたのは素直に嬉しかったです。このまま順調にサイクルが回っていくことを願うばかりです。

続いて、いちごの畑へ。

茂みをかき分けるような少しラフな道を進んでいると、通りかかる地域の人々から次々と声をかけられました。その様子を見たボスと同僚オフィサーは驚き、「私たちよりも、この地域の路地を知っているし、住民たちからも知られているね」と笑っていました。

赴任してから今日まで、自分の足でひたすら歩き回り、泥にまみれて人と向き合ってきた時間が、確実にこの土地に根を張っているのだと実感させられた瞬間でした。

カタツムリの試練と、バナナマルチの功罪

しかし、いちごの現場に到着すると、新たな課題がむき出しになって立ちはだかっていました。

株を観察すると、たくさんの果実が膨らみ始めています。ところが、その大切なフルーツのほとんどすべてが「カタツムリ」によって食い荒らされてしまっていたのです。

せっかく成った実が目の前で台無しにされている光景は、やはり悔しさが込み上げてきます。

まずは早朝の目視確認と捕殺を徹底してもらうこと。そして、土の上に敷いているマルチの刷新を決めました。 現在は保温と乾燥防止のために「バナナの葉」を使っていますが、バナナの葉は保水性が高くて土壌には良い反面、湿度を過剰に溜め込んでカタツムリなどの害虫の格好の隠れ家になってしまいます。管理のしやすさも考慮し、乾燥した落ち葉か、ナイロンマルチへの切り替えを検討しています。

農薬に頼らないオーガニックを貫くことの難しさを、害虫の猛威を通して改めて思い知らされています。

一方で、進展もありました。

鳥からの被害を防ぐための「防鳥ネット」の建設作業が、ついに始まりました。 近所から呼ばれた2人のプロの大工さんが現場に入り、手際よく作業を進めてくれていました。

水平をしっかりと取り、強風や耐久性のリスクヘッジまで計算に入れた補強など、やはりプロの仕事は素人の日曜大工とは一線を画す美しさがあります。今日の段階で完成までは見届けられませんでしたが、来週現場を訪れた際に、しっかりとしたネットが立ち上がっているのを見るのが今から楽しみです。

1日2食の丁寧な食卓と、食材の距離感

案内と作業の確認を終え、遅めの昼ご飯にありつけたのは16時を過ぎた頃でした。
農家さんに美味しいご飯を振舞っていただきました。

最近は、自然と1日2食の生活リズムが定着しつつあります。 無理に3食食べようとするのではなく、空腹を感じたタイミングで、目の前の一食一食を丁寧に、美味しくいただく。

ケニアの田舎で暮らしていると、市場で買ってくる野菜や穀物、肉といった食材たちが、どのような場所で、どのようなプロセスを経て自分の手元に届いたのかが日本にいる時よりも見えやすいです。生産の現場と自分の食卓との距離が圧倒的に近いからこそ、一口の重みやありがたみを、よりビビッドに感じ取ることができるのだと思います。

今日も停電です。
不条理な害虫の被害やインフラの不便さは絶えません。

しかし、自分の足で開拓してきた地域の人々との繋がりと、命の手触りがある食事。
それらを感じられるこの日常は、とても満ち足りています。