朝一の完売と、「営業×マーケ」が生み出すリピートの力
カレンダーを開くと、朝から夜まで隙間なく予定が詰まっていた本日、水曜日。
どれだけこなせるだろうかと少し身構えていましたが、蓋を開けてみれば、予想以上にスムーズなペースで前倒しで消化していくことができました。
その最大の理由は、朝一番で受けていた注文だけで、準備していたキノコがすべて完売してしまったことです。 直接街を歩き回る必要がなくなり、現場での時間は顧客とのささやかな雑談程度で完了しました。
現在、キノコ販売を開始して1ヶ月。データを取り始めて見えてきたのは、
- F2転換率(2回目の購入率):50%強
- F3転換率(3回目の継続購入率):約40%
という、とても優秀な数字でした。
単価が安くはない商品であるため、全員がターゲットになるわけではありません。特にD2Cで展開している現状においては、「誰が真の優良顧客になり得るか」を見極め、丁寧に育成していくことが何よりのキーポイントになります。
幸いなことに、私たちのプロダクトそのもののクオリティが非常に高い。
「美味しかったから、また買いたい」と声をかけてくれるファンが確実に生まれています。
最初は「私」という人間の信頼で買ってもらう。
そして一口食べてもらった後は、プロダクト自体の魅力によって、単発のイベントで終わらせずに継続購入へと繋げていく。
前職時代、クライアントに何度も提案していた「営業×マーケティング」のシームレスな接続。その重要性と本質を、アフリカの現場で自分の手を動かしたことで、初めて生々しい手触り感をもって理解できた気がします。 営業にかける時間を削減しながらも一定数が売れる土壌ができてきたからこそ、ここからは顧客との信頼関係を深めつつ、さらに再現性のあるマーケティング戦略を設計していきます。
7,000シリングの現実と、普及員の真骨頂「不要になる移譲設計」
キノコの収穫の後は、来週から始まる新しい栽培サイクルに向けたミーティングを行いました。この議論は、一緒に走ってくれている同僚オフィサーの卓越した立ち回りのおかげで、最高の方向へと転がりました。
販売開始から1ヶ月も経たないうちに、すでに7,000Ksh(約8,500円)という目に見える現金を稼ぎ出せている現実。 この数字をファクトとして農家に提示した上で、このビジネスを本気でやる価値をしっかりと腹落ちさせてもらいました。
そして、次回以降のサイクルからは、生産から販売までの全プロセスを農家自身の手で実行してもらう、という明確な役割移譲のプランをフィックスさせました。 私と同僚は、あくまで最小限のサポートに回る。お金の管理なども、次の次のサイクルからはすべて彼ら自身に任せていく。
ここまでの仕組みと実証データを整えた。
これで次がうまくいかなかったら、それは農家自身の責任です。
冷たく聞こえるかもしれませんが、この状態を作れたことを非常にポジティブに捉えています。
支援者が、いかにいらない状態を構築していくか。
これこそが、農業普及員として果たすべき本当の仕事のあり方なのだと同僚のファシリテーションを前に痛感しました。
それにしても、私の担当同僚は本当に素晴らしい。他の隊員たちの現場の話を聞くにつれて痛感しますが、彼女の処理能力やファシリテーション力、当事者意識の高さは、ケニアの行政組織の中にあって頭一つ抜け出たプロフェッショナルの仕事ぶりです。彼女の隣で学べる環境があることに、深く感謝しています。

病院の嬉しい誤算と、サトウキビを超える新たな産業への挑戦
続いて、いちごのプロジェクトへ。
まずは病院の敷地にあるプロットのモニタリングに向かいました。 こちらのいちごは、悔しいくらいに完璧な管理が施されており、すでに可愛いフルーツが赤く色づき始め、今にも収穫できそうな勢いを見せていました。規模こそ小さいものの、パートナー農家さんの成長スピードすら追い抜きそうな勢いです。こちらの意図を正しく汲み取って結果を出してくれる現地パートナーの存在は、本当に嬉しい誤算でした。

その後は、昨夜メッセージをもらっていたパートナー農家さんのもとへ向かい、これからのブランディングとマーケティング戦略について膝を突き合わせて議論しました。
彼女が描いていた構想は、想像以上にダイナミックで、熱量に満ちたものでした。
ローカルでの直販と並行して、デジタルマーケティングに注力したいこと。 そして、自分たちのブランドで立ち上げた販売プラットフォームを活用して、地域の他の小規模農家たちの販売代行(マージンビジネス)を行いながら、彼らのエンゲージメントを高めていきたい、というビジョンです。
「周りの農家さんは、やる気があっても『売り方』を知らない。確実に売れる出口がないから、本気でアクセルを踏み込むことができない。だから、私たちがその出口を保証することで、彼らを巻き込んでいきたい」
彼女がそこまでの強い課題感を抱いている背景には、地域全体の切実な構造問題がありました。
ここマトゥングの経済の土台を長年支えてきたのは「サトウキビ産業(ムミアス・シュガー)」です。 しかし近年、工場の腐敗や経営破綻によってサトウキビ産業は著しく衰退し、極めて不安定なものへと成り下がってしまいました。農家たちは、頼るべき主産業を失い、途方に暮れているのが現状です。
サトウキビだけに依存する時代は終わった。
それに代わる新しい換金作物の選択肢を、この場所から作る。
壮大すぎる夢かもしれません。 国が巨額の予算を投じてきた巨大なサトウキビ工場に比べれば、私たちのいちごやキノコは、あまりにも小さな試みです。
しかし、サトウキビに代わる現実的な選択肢が存在するという希望を、一人でも多くの農家に広げていくこと。その変化の震源地に、私たちがなること。
これほど胸が躍り、挑戦する価値のある物語が他にあるでしょうか。
目標は、果てしなく大きく。
しかし、足元は、今日決めた目先の一歩から地道に、確実に。
彼女のその熱い想いを形にするために、私も一人のパートナーとして、できる限りの知恵と行動を惜しみなく差し出していこうと思います。
夜は、今日もオンラインでのミーティングが重なりました。 昨日から電気も水も不安定な状態が続いていましたが、ポータブル電源と蓄えた水をやりくりしながら、なんとかすべてを乗り切ることができました。
不便であっても、工夫次第でなんとかなる。
そのタフな適応力もまた、ケニアの日常が私に授けてくれた大切な武器です。
明日からも、この胸の興奮をエネルギーに変えて。
マトゥングに新しい産業の芽を育てるための具体的なアクションを、一つひとつ丁寧に重ねていきます。

採れたて卵と一生懸命作ったケチャップライス。美味しいすぎました。