赴任4ヶ月。まっすぐな瞳の吸引力
ケニアへ渡航してから、丸4ヶ月が経過しました。2年間の任期のうち、すでに6分の1が終わったことになります。 毎日こうしてブログを書いていると、残り日数が確実に減っていくのをリアルに感じます。そして、ケニアの生活に慣れれば慣れるほど、日々の時間の流れが残酷なまでに早くなっていることにも気づかされます。
最近、強く感じていることがあります。それは「自分の影響範囲が、今のところとても狭い」ということです。 これまでたくさんの人と出会い、お話をしてきました。しかし、正直なところ自分自身が彼らから「学ぶ」ばかりの毎日です。こちらから何かをしてあげられるという考え自体が傲慢なのかもしれませんが、それでも、日本の税金を使ってこの場所に来たからには「Win-Win」の価値を残さなければなりません。
今、学校は長期休暇中で、街には子どもたちが溢れています。 破れた洋服を身にまとい、裸足で、ゴミを丸めて作った手作りのボールを無邪気に蹴っている姿。彼らのあの、濁りのないまっすぐな眼差しを見ると、「私の活動は全然足りていない」と痛感させられます。 あの小さな子どもの瞳の吸引力はすごいです。まるで鏡のように自分に跳ね返ってきて、自分の弱さや無力さを喰らわされるような感覚に陥ります。
イチゴが繋ぐ、病院と地域の連携
朝はイチゴのパートナー農家の元へ行き、先週のフィールドデイで学んできたことを共有しながら、今後の動きを確認しました。 全体的に株の調子は良く、新しく別の畑を作ってトライアルを加速させることになりました。彼女には「1度に1テーマ」くらいに絞って話をすると、しっかりと聞き入れて実行してくれるという手応えを感じています。

そのあとは、自分の影響範囲を少しでも広げたいという思いから、現地の病院へ足を運びました。 私のミッションである「農家の収入向上」と「地域の栄養改善」について説明し、まずは地域の具体的な栄養状態を尋ね、プロジェクトの全体像を提案するためです。
病院のスタッフから語られた現状は、想像以上に根深いものでした。 子どもたちは主に貧血やタンパク質・エネルギーの低栄養状態にあり、それに伴う発育不良に苦しんでいるとのこと。さらに妊婦に至っては、10人中8〜9人が基準値を下回る低ヘモグロビン(貧血)状態にあるという深刻な状況でした。
この背景には、複雑な社会構造が絡んでいます。 若い母親が仕事のために都市部へ出稼ぎに行き、残された高齢の祖母が子どもの世話をしている家庭が多いのです。体力的な生産力不足に加え、栄養に関する知識不足も相まって、子どもに十分で栄養のある食事が提供できていないのが実態でした。
私個人的には豆や伝統野菜には栄養価が高いものが多く、それらは知識や文化に起因する部分が大きいと思っています。例えば、伝統的な野菜を茹ですぎて栄養たっぷりの煮汁を捨ててしまったり、食後すぐに甘いチャイを飲んで豆や野菜からの鉄分吸収を強力に阻害してしまったりしているのです。

そこで、私が普及を進めている「イチゴ」が生かしたいと考えています。イチゴはビタミンCの宝庫であり、食後のデザートとして食べるだけで、通常の食事からの鉄分吸収率を3〜4倍に跳ね上げる「究極のブースター」になります。
もちろんビタミンCを摂取するなら、他のものもいくらでもあります。しかし、先日訪れたケリチョの視察で「イチゴは子どもたちにとって最高の贅沢になる」という話をスーパーの店員に聞きました。この辺りではまだイチゴを食べたことがない、知らないという人も多いかもしれませんが、子どもが喜ぶポテンシャルは間違いなくあります。 「嬉しいご褒美としてイチゴを食べていたら、結果的に地域の深刻な栄養改善に繋がっていた」。そんなポジティブな連鎖を作れたら最高だと考えています。
病院の方々には、「病院の敷地内にイチゴのデモ圃場を作り、そこを患者への栄養指導や啓発のタッチポイントにしたい」と提案しました。 ありがたいことに、病院のスタッフは非常に理解が早く(英語も堪能でした)、あっという間に話が通り、3週間後から病院の畑でイチゴを育てることが決まりました。
まだまだ、子どもたちの目をまっすぐ見続けられませんが、農家、農業事務所、学校、そして病院。 点と点だったステークホルダーを繋ぎ、面でアプローチしていく。その大きな目標に向けた、確かな第一歩を踏み出せたと思います。

料理の癒やしと、不穏な世界情勢
午後は家でPC作業に没頭し、今日病院で話したことや、明日から本格始動するマッシュルームプロジェクトについての考えを整理しました。 きっと明日からも思い通りに動かないことばかりだと思いますが、隙間時間を縫って、今日練り上げた提案を少しずつ形にしていこうと思います。
夜は、自炊でカレーとチュロスを作りました。 カレーは失敗のしようがなく完璧な仕上がり。チュロスも、絞り袋の端をハサミで切っただけなので綺麗な星型にはなりませんでしたが、味は美味しかったです。 何もない環境で工夫しながら料理をする時間は、自分が「生きている」と実感できるのでとても好きです。
ただ、気がかりなニュースもあります。 ホルムズ海峡の情勢悪化に伴う燃料不足の影響が、ケニアも例外ではなく波及してきているようです。状況次第ではナイロビへの退避集中、最悪の場合は「一時帰国」という可能性もゼロではないとのこと。 隊員の安全を最優先するのがJICAの鉄則なので、もしもの時は速やかに指示に従うしかありません。
自分がどれだけ現場で熱い思いを持っていても、世界情勢一つであっけなく終わってしまうのが海外ボランティアの脆さです。何事もなく、この平和な村での活動を最後まで全うできることを、今はただ願うばかりです。



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