違う大陸の同期と、比較の効用
朝は、別の国に派遣されている同期隊員とオンラインで会話をしました。
彼と私では、大陸も違えば、職種(彼は専門職)も違い、日々の忙しさも異なります。
「アジア人として差別される私」と「現地人に間違えられる彼」。 同じJICA海外協力隊という括りであっても、抱えている悩みは全く違います。
でも、全然違うからこそ話しやすいこともあるし、新しい気づきもあります。 他者を通して自分の境遇を見る。誰かと「比較」しないと、自分の現在位置というのは意外と見えなかったりするものです。それは決して優劣の話ではなく、客観視するための大切なプロセスなのだと、彼との会話で再確認しました。みんな、それぞれの場所でそれぞれの悩みを抱えて戦っているようです。
ナママウィ・ワードの豊かな農家
午前中は、マトゥング・サブカウンティの中にある「ナママウィ・ワード(Ward=区のような行政単位)」というエリアへ足を運びました。 ワードオフィサーに同行してもらい、地域の農家を案内してもらいます。
訪れた農家はとても大きな家で、敷地も広大。イースター休暇を利用してナイロビから子どもたちが帰省してきており、とても賑やかでした。 ナロク(ケリチョの近く)にいる息子さんが持ってきたという「ムルシク(カレンジン族の伝統的な発酵乳)」もご馳走になり、一家の豊かさを感じました。

この辺りは雨が少ないらしく、実際の畑もかなり乾燥していましたが、彼女は保水性を高めるために様々な方法を試行錯誤していました。大変な環境でも、工夫でなんとかする。そして富を築く。とても素敵で自立した方でした。私が入り込む余地はなさそうなほどの完成度です。

名もなき薬草と、成長の喜び
彼女たちと一緒に畑を歩きながら、「これ、なんていう名前だっけ?」という会話がしばしば起こりました。 私がその植物の名前や特徴をすんなりと答えられる場面が何度かありました。「あ、自分、ケニアの農業に結構詳しくなっているな」と、小さな成長に喜びを感じます。
一方で、彼女たちが特に名前も気にせず、ただ生活のために育てている植物があることも興味深かったです。普通に雑草に見えるものを指差し、「この葉っぱを食べると薬になるんだよ」と食べさせてくれました。(意外と美味しかったです)。 換金作物ではないから名前なんてどうでもいい。ただ、生活の役に立つから育てる。そのプリミティブな農のあり方に、人間の営みの原点を見た気がしました。

「チンチョン」と呼ばれない帰り道
帰り道は、ワードオフィサーと別れ、途中まで1時間ほど畑の間を一人で歩いて帰りました。
このワードを歩いている間、子どもも含めて「中国人(チンチョン等)」とからかわれることが一度もありませんでした。すれ違う人はみんな、「Habari(How are you)」と気さくに挨拶をしてくれます。ニコニコと話しかけてくるおばちゃんたちもいて、歩きながら思わずニヤニヤしてしまいました。すごく穏やかで、居心地が良いのです。
大通りから少し奥に入ると、意外なほど大きくて立派な家がたくさんあります。そうでない小さな家に住んでいる人たちも、みんなゆったりとしていて、とても幸せそうに見えました。 「お金」って、豊かさって、何なんだろう。 難しいテーマですが、そんなことを考えながら歩く土の道は、最高の時間でした。

適当な謝罪と、白熱する神学論争
事務所に戻ると、これまた「ケニアらしい」日常が待っていました。
肥料の受け取り登録をしたのに連絡が来なかったという農家さんが、状況確認に訪ねてきました。 驚いたのは、明らかに農業事務所側のミス(連絡漏れ)なのに、担当オフィサーの謝罪が信じられないくらい適当だったことです。
靴紐をいじりながら、相手の目も見ず、「とりあえず、ごめん」みたいな軽いトーン。 日本だったらまずあり得ないし、逆上されてもおかしくない態度ですが、農家さんもそこまで怒っていません。年長者への敬意なのか、それとも「行政組織」という立場の強さがそうさせるのか。
その後、事務所の同僚たちの間で「一夫多妻制」について、1時間半ほど白熱した議論が交わされました。(いつも夕方になると、こんな感じで関係のないことを、ずっと話しています。)
一夫多妻を擁護する側は、「旧約聖書のヤコブやダビデ、ソロモンを見ろ。イエス・キリストでさえ一夫多妻の家系から来ている!」と主張。 対する反対派は、「旧約聖書は新約の影にすぎない。本当の救いはキリスト以降にもたらされたのだから、アブラハムの時代を今の免罪符にするな!」と真っ向から反論。仕事そっちのけで聖書を引用しながらガチの神学論争(宗教論争)を繰り広げる彼らの姿は、見ていて本当に面白かったです。

今日は久しぶりに、明確な目的もなくフラフラと歩き回りましたが、人とも風景とも良い出会いがあり、任地の新たな良さを発見できました。定期的に、ただひたすら歩き回る日を作るのも悪くないなと思います。



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