目的地の、その先へ
3日間のJICA九州での研修を終え、熊本県宇城市戸馳島へ。
宮川洋蘭とイノPでの約70日間の活動が始まった時、正直「結構長いな」なんて思っていました。 でも終わってみたらあっという間。それだけ充実した日々だったんだと思います。
ケニアでの活動を見据え、「農業」と「第六次産業」を学ぶ。その目的は明確でした。
胡蝶蘭や観光農園での作業、ECサイトの提案、そして鳥獣害対策。当初の目的通り、花や果物の栽培から、多角的に農業を見る視点まで、多くの知見を得ることができました。
でも、 この研修で得たものは、そんな目的を遥かに超える、もっともっと重要で、温かいものでした。

何もない島に、「すべて」があった
この戸馳島には、スーパーも信号機もありません。
道の真ん中で猫が日向ぼっこをしているような、人口1,000人ほどの小さな島です。いわゆる、過疎地域です。
しかし、国会議員から上場企業の役員、大学教授まで、全国津々浦々、時には海外からも、絶え間なく多くの人がこの島を訪れます。
そこに一体、何があるのか。
答えは、”人”でした。
「地方創生」という都会からの傲慢な押し付けではない。
自分たちの手で地域を守り、盛り上げ、次世代に繋いでいく。そんなパワフルな人々が、ここにはいました。
その先頭で旗を振るのが、宮川さんと稲葉さん。
お二方を間近で見て、人を引っ張る力と、人に応援される力。その圧倒的な「人間力」を肌で感じました。
壮絶な人生経験から滲み出る人としての厚み。どっしりと力強く、エネルギッシュに働き、そして誰よりも楽しそうに笑っている。それが「人間力」の源泉だと私は思います。
子どもの頃、私たちはこんな大人に憧れていたはずです。

かっこいい大人たちと、最高の仲間たち
こんなリーダーがいるから、優秀で、素敵な人たちが集まってくる。
有機農業を実現するためにECを学ぶメロン農家。 実践的な知見を持つ教育者を目指す、戸馳島のマルチワーカー。 動物が好きで、その想いを原動力に世界へ飛び出す、協力隊の同期。
違う畑で頑張る同世代の仲間たちの姿は、大きな刺激であり、勇気をたくさんもらいました。
そして、私にさえ真正面から本気で向き合ってくださった、たくさんの大先輩方。
人吉の災害の記憶を一日かけて教えてくださった元NHKディグラクターの方。カメラを通して平和への種を蒔き続ける方。PTA会長から醤油屋の店主までこなし、全力で子供たちと向き合うサッカーコーチ。
挙げ始めればきりがないほど、出会った全ての人たちが、謙虚で、温かくて、本当にかっこよかった。
この研修で得た何よりの財産は、これらのかっこいい「人」たちとの出会いです。

「先義後利」という、一番の学び
なぜ、これほどの人たちに出会えたのだろう。
それはこの2ヶ月半、がむしゃらに働き、提案し、企画したからかもしれません。
宮川さんが大切にされている「先義後利」という言葉があります。
この活動は、決して給料が良いわけではありません。でも、自分にできることは何かを考え、大義のために、今まで学んできたことを惜しみなく伝え、一生懸命に汗を流したつもりです。
その「義」が、結果的に「人」という、何にも代えがたい「利」に繋がったのだとしたら、こんなに嬉しいことはありません。

「人に頼る」という、最大の学び
この研修は、私の一番の弱点にも向き合わせてくれました。
それが「人に頼る」ということです。
特に自分たちで企画した「車座」では、その弱点が露呈しました。
これまでの私は、何でも自分でやろうとして、そして意外にも何とかできてしまうことが多かったです。しかし、この島で出会ったかっこいい大人たちは、互いに頼り、支え合うことで、より大きなことを成し遂げていました。
宮川さんが大切にされている「微力でも無力ではない。」という言葉。
この言葉の真髄は、まず「義」のために、たとえその力が僅かでも、行動を起こすこと自体に価値がある、ということなのだと思います。そして、その一歩が誰かの心を動かし、仲間が集まってくる。そうして個々の「微力」は、やがて大きな力へと変わっていく。
その姿は、「人」との繋がりの中でこそ物事は前に進むのだと、改めて教えてくれました。

ケニアへ繋ぐ、一番大切なこと
年末〜年明けには、いよいよケニアに派遣されます。
環境も文化も全く違う場所で、きっとうまくいかないことばかりでしょう。
でも、忘れてはいけない軸が、この75日間で見つかりました。
一つは、「大義」を持って、一生懸命動くこと。
一つは、周りを信じて「人に頼る」こと。
そして、誰よりも人生を「楽しむ」こと
協力隊員として、あるいは一人の人間として、これだけはブレずにいたいと心から思います。
東京発、戸馳島経由、ケニア行き。
その経由地は、目的地にさえ思えるほど、濃密で、温かい場所でした。
本当に、ここにきてよかったばい。
いつかまた帰ってきます。本当にありがとうございました。



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