ドイツ仕込みの先進農家と「リスク分散」
朝、今日会う予定だった農家さんから「予定が入ったから早く来てほしい」と連絡があり、8時前に家を出発しました。
向かったのは、隣町にある先進農家の畑。マッシュルームとイチゴの栽培について意見交換をするためです。 彼女の農園は、私の想像を遥かに超えて先進的でした。
話を聞くと、個人的にドイツへ農業研修に行ったり、アメリカのコロラド大学から農業研修生を受け入れたりしているとのこと。ケニアの小規模農家が抱える課題として、よく「やる気の欠如」や「新しいことに挑戦するリスクが取れないこと」が挙げられます。もちろん、その日暮らしのギリギリの資金で生活していれば、リスクを負えないのは当然で、それは心やモチベーションの問題ではありません。
しかし彼女は、その壁を「パートナーシップ」で乗り越えていました。 様々な場所へ赴いて学び、大学やNGO、行政機関といったパートナーを見つけ、農家グループと協同してビジネスを作る。「自分一人ではできないこと」を、使えるリソースを最大限に活用して形にし、見事に成り上がっているのです。

また、全く異なる複数の品種を育てているのも「リスクを分散するため(ドイツで学んだ手法)」だと語っていました。 コストやリソースをシェアし、リスクを最小限に抑えながら新しいことに挑戦する。彼女の戦略的なビジネス設計には大いに学ぶべきものがありました。 しかし、そんな論理的な彼女が、自身の成功の秘訣を最終的に「パッションがあるからよ」と笑って総括していたのが、なんとも魅力的でした。
彼女は今後、マッシュルームをさらに深く学ぶために日本や中国などアジア圏に行きたいそうです。何か力になれたらいいなと思います。 来週、彼女からマッシュルームのノウハウを詳しく教えてもらう代わりに、私は彼女のイチゴ栽培を手伝う約束をしました。 ただタダで教えてもらうのではなく、労働を提供して知識を得る。こういう「等価交換」のような泥臭い関係性のほうが、私の性には合っています。

市場のリアルと、野生マッシュルームの需要
その後、ムミアスのマーケットを視察しました。 質の良いナスなど珍しい野菜も少し置いてありましたが、やはり客の動向を見ていると、最終的に売れていくのは「トマト・キャベツ・玉ねぎ」という定番商品です。真新しい野菜をローカルで売るのは簡単ではありません。
しかし、「ナチュラルマッシュルーム(野生のキノコ)」は結構な量が陳列されており、需要の高さが窺えました。単価もそこまで悪くありません。 「キノコを食べる文化」がすでに根付いていることは、今後のプロジェクトにとって強い追い風です。

人生で一番頭を撫でられた日
昼頃、ムミアス・シュガー工場の近くにあるスタジアムへ足を運びました。
小学生たちの学校別スポーツ大会を見るためです。
スタジアムは、歌って踊る子どもたちのものすごい活気と熱気に包まれていました。 彼らの走り方は、誰かに専門的な指導を受けたわけではないのでしょうが、身体のバネが効いていてとても美しい。
面白かったのは「5キロ走」のような長距離種目です。 スタートの号砲とともに、選手たちは1周目から短距離走のような全力ダッシュをかまします。応援団もそれに合わせて熱狂的な盛り上がりを見せます。 しかし、2周目に入ると当然のように全員が見事に大失速。それと完全にシンクロして、応援団のボルテージも急降下していくのです(笑)。 ゴール付近になる頃には、応援団はすっかり飽きてしまっている。その感情に素直すぎる子どもらしさが、とても可愛かったです。

そしてこの日、私は人生で一番、頭を撫でられました。 アジア人のサラサラしたストレートの髪の毛が珍しくて仕方ないらしく、子どもたちが次々と触りに来るのです。 彼らからの質問攻めにも遭いました。日本の食べ物、日本の音楽、そしてサッカーについて。中でも一番興味を持っていたのは「日本人は何を食べるのか?」ということでした。 肌の色や髪の毛という「見た目の違い(Color)」は、子どもたちにとって純粋な好奇心の対象であり、そこから始まる「食」や「文化」への興味こそが、異文化理解の最初の入り口なのだと実感しました。

固まった「3つの柱」と、新たな挑戦
夕方、事務所に戻り、同僚と進捗報告のミーティングを行いました。 色々なアイデアを発散させてきましたが、ここへきて注力すべきプロジェクトが明確になりました。
「イチゴ」「キノコ」そして「グースベリー(食用ほおずき)」。 この3つの柱で、今後の活動を進めていきます。

頼もしいことに、同僚のオフィサーが熱心に農家の選定を行ってくれています。事務所を訪れる農家から状況をヒアリングし、こちらの構想を伝え、マッチングを図ってくれる。一人ではできないことも、チームになれば進むスピードが格段に上がります。
特にグースベリーは、先日スーパーで見つけたジャムやソースがめちゃくちゃ美味しかったので、個人的にも非常にポテンシャルを感じています。 「等価交換」で得た知識と、同僚との連携。活動のギアが一段階、確実に上がりました。



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