90日目の現在地:球数を撃ち、視野を広げる
2年間の活動期間(約730日)の、ちょうど8分の1が経過しました。 活動の大きな節目として、今の自分の現在地を書き残しておこうと思います。
先月までの最大の目標は「生活基盤を作ること」でしたが、それは意外なほどスムーズに進み、現在は「とにかく球数を撃つ(色々なことに挑戦してみる)」フェーズに入っています。
今日、朝から「地元農家向け情報掲示板」の提案書を作成し、配属先の農業事務所に提案しました。反応は上々で、来週ボスと最終調整をした後、農家グループと一緒に活動を開始する予定です。 これで、イチゴ、加工品試作、マッシュルームに次ぐ、「4つ目のプロジェクトの柱」が立ち上がりました。ペースとしては決して悪くないと感じています。
なぜこのスピード感で動けているのか。それは、「意識的にインプットをしているから」だと思います。 現場の農家や事務所の同僚との対話にリソースを割くのは大前提ですが、それに加えて、ケニアのニュースを読み、本を読み、そして週末には遠征して色々な地域を見て回る。
狭い任地に入り込んで行くのも大事ですが、そこだけにずっと留まっていては良くない気がしています。 広い視野で色々なものを見ないと、自分の任地の「良さ」も「悪さ」も相対化して見えてきません。人間は良くも悪くも環境に慣れてしまう生き物だからこそ、月に1回は必ず任地以外のどこかへ行くルールを自分に課そうと思います。
来月の目標は、このうちの2つのプロジェクト(キノコのサプライチェーン調査と、地元農家向け掲示板)を具体的に前に進めること。気合が入ります。
プライドと関係構築。年配農家との対話術
日中は、事務所から片道3kmほど離れた農家を歩いて訪問しました。 そこではイチゴをはじめ、サトウキビ、豆、コーヒー、ハイビスカスなど、本当に多種多様な品種が育てられていました。(砂糖のように甘い謎の葉っぱ(ステビア)や、ジャックフルーツを小さくしたような果物など(サワーソップ)、見たこともない植物の宝庫で非常に勉強になりました)。

ただ、水が足りておらず、畑はどこも空っからでした。 コンサルタントの癖で、つい「もっとこうすれば……」と具体的なアドバイスを口にしかけたのですが、彼の態度から「自分たちのやり方を知っているぜ」というプライドの高さを察知しました。
そこで私は、アドバイスをするのをピタッと止め、徹底して「褒めること」にシフトしました。 特にケニアの年配の方に対しては、いきなりよそ者が正論を振りかざすよりも、まずはリスペクトを示し、関係構築を行うことが何より優先されます。
この対応が自然にできたことに、少し自分の成長を感じました。 まだまだですが、スワヒリ語の語彙も増え、会話の内容の半分くらいは理解できるようになってきています。もっともっと頑張ります。

同行した農業オフィサーと帰り道に色々話し、今後の予定を一緒に立てました。 毎日「明日は何をしようか」と自由に予定を組めるこの環境です。各方面にアポイント調整をするなど大変ですが、楽しいです。

私は牛じゃない、人間だよ
帰り道、少し面白い出来事がありました。 すれ違った小さな子どもが私を指さして、こう叫んだのです。
「ンゴンベ!(Ng’ombe=牛だ!)」
周りを見渡しても、どこにも牛はいません。 どうやら、本当に私のことを指さしているようです。理由はよくわからない。
私はすかさず、 「Mimi si ng’ombe. Mimi ni mtu.(私は牛じゃないよ、人間だよ)」 とスワヒリ語で返しました。 まさかケニアに来て、自分が牛ではないことをスワヒリ語で主張する日が来るとは思いませんでした。その子は最後まで私のことを牛だと思っていたようです。不思議なものです。
ここまでぶっ飛んでいると、「ちんちょん」よりは、嫌な気分になりませんでした。

給食から見る「権利」と「栄養」のバランス
夜は、同期隊員たちとの定期オンライン会。 そこで出た「フィンランドと日本、そしてケニアの給食の違いから見る『権利』と『栄養』のバランス」についてのディスカッションが、興味深く、示唆に富んでいました。
フィンランドの給食では、個人の「権利」が徹底して重視され、幼稚園生であってもビュッフェ形式の中から「自分の意思で食べるものを選ぶ」そうです。 一方で日本の給食は、未成年の判断能力を鑑み、管理栄養士が完璧に計算した「栄養」の行き届いた食事を全員が同じように食べます。少し軍隊的(画一的)な側面はありますが、子どもの健康を担保するという意味では極めて合理的です。 「そもそも『栄養』という概念は、どこまで個人の意思に介入して良いものなのか?」という深い問いに発展しました。
翻って、ここケニアはどうでしょうか。 ケニアの多くの子どもたちには、そもそも「選ぶ」という土台(権利)すら与えられていません。毎日同メイズ(トウモロコシ)と豆の食事。彼らに「好き嫌い」という概念が存在する余裕があるのかすら疑問です。
先進国の「権利」と「管理」の議論は、圧倒的な「欠乏」の前に立つと、とても遠い世界の話のように感じられます。 しかし、だからこそ私たち協力隊は、彼らが少しでも「選べる」豊かさを手にできるように、プロジェクトを動かしていくのだと思います。
活動の1/8が終了。 残りの7/8も、広い視野を持ちながら、全力で駆け抜けます。



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