【ケニア派遣77日目】ナタ一本で作るイチゴの屋根。ラマダン中のムスリム一家が教えてくれた本物のホスピタリティ

JICA海外協力隊
JICA海外協力隊Kakamegaケニア派遣

斧一本の匠と、ラマダンのホスピタリティ

今日は朝から、大雨で崩壊したイチゴ畑の屋根の修復作業です。同僚は別件があったため、1人でパートナー農家の元へ向かいました。

現在、ケニアの学校はハーフターム(学期半ばの1週間休み)の期間中。そのため、普段は学校にいる子どもたちで街は賑わっていました。農家のお母さんの夫や長女は学校の先生をしており、今回初めて挨拶することができました。日本人に対してリスペクトを持って接してくださる、本当に親切なご家族です。

屋根の修復は、お父さんと長男の3人がかりで行いました。 フレームを増やし、ネットが弛まないように工夫して張っていきます。 驚いたのは彼らの道具使いです。ノコギリではなく、ナタ(パンガ)のような刃物一本で、器用に木を切り出し、形を整えていきます。本業の職人ではないのに、その腕の高さには見惚れてしまいました。

私は私で、穴を埋めたり、木を支えたり、畝を整えたり、草をむしったりと、自分にできることを探して一生懸命に手を動かしました。 約3時間で、より頑丈な屋根が完成。疲れましたが、共に汗を流すとても良い時間でした。

断食中の食事の振る舞い

今はラマダン(断食月)の期間中です。 このご家庭はムスリムなので、日中は水すら飲まないファスティングの真っ最中。 それにもかかわらず、私を温かくもてなし、仕事の後には食事まで振る舞ってくれました。帰り際には、一人では抱えきれないほどの大量のバナナのお土産まで。 自分たちは空腹で過酷なはずなのに、他者への奉仕を忘れない。その信仰心と本物のホスピタリティに、深く感動しました。

野望と、報連相の欠如

帰りは、長男と一緒に歩いて事務所まで戻りました。 道中、彼が胸の内を語ってくれました。 「この畑をスケールさせて、一つのエンタープライズ(企業体)にしたいんだ」 具体的なアクションや事業計画はまだこれからのようですが、彼の中には確かな野望があり、今回のイチゴ栽培に関しても非常に前向きに協力してくれています。彼の熱量は、私の活動の大きな原動力になりそうです。

一方で、事務所に戻ると現実が待っています。 JICAへの申請書類などを進める中で、農業事務所の同僚とやり取りをするのですが、とにかく「報連相(報告・連絡・相談)」がありません。 「それは彼女に伝えたよ」「いや、私は聞いていないよ」 この不毛なラリーが日常茶飯事です。

日本人の感覚からすると疲弊しますが、これもまた異文化。「まあ仕方ない」と割り切るしかありません。 昨日の「10秒切り替え」の精神です。他人の行動はコントロールできないと諦め、自分のタスクに集中します。

ケニア教育の大改革と、理想の壁

夜は、KESTES(隊員有志による奨学金支援団体)のオンライン勉強会に参加しました。 テーマは、「刷新されたケニアの教育システム」についてです。

【調査】ケニアの教育システム移行(CBC) ケニアでは現在、長年続いた「8-4-4システム(暗記・点数偏重)」から、「CBC(Competency Based Curriculum:コンピテンシー・ベースド・カリキュラム)」への大改革が進められています。 これは、テストの点数による単一指標の優劣評価を廃止し、より実践的で、生徒個人の才能や複合的な能力を評価するシステムへの移行を意味します。

勉強会を通して、この改革がいかにドラスティックなものかを知りました。
方向性としては非常に現代的で、目指すべき理想の姿だと思います。

しかし、同時に「これは現場の教員の腕に全てがかかっているな」と痛感しました。正しく教える能力、そして「複合的に評価する」能力。 これまで何十年も旧システム(点数評価)でやってきた先生たちが、明日から突然新しいOS(思考回路)にアップデートできるとは到底思えません。

理想だけでは回らないのが現実の社会です。「テストの点数」という画一的な評価は、ある意味で非常に分かりやすく、評価者にとって「楽」であり、また「公平」でもありました。この絶対的な指標を手放した時、どのようにバランスをとって教育の質を担保していくのか。

私が活動するこの2年間は、まさにそのシステム移行の過渡期にあたります。
KESTESの活動を通して、教育という国の根幹がどう変わっていくのか、より当事者に近い距離で観察し、学んでいきたいと思います。

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