神秘的な日の出と、マタツの洗礼
JICAの60周年式典に参加するため、任地を離れて首都ナイロビへ向かいます。
毎朝4時半頃、近所のイスラム施設から流れる大音量のアザーン(礼拝の呼びかけ)で目を覚まします。これも日常になってきました。
6時45分に出発。 サトウキビ畑の向こうから昇ってくる朝日は、言葉を失うほど神秘的です。ケニアの太陽は、日本よりも輪郭がはっきりとしていて、力強く美しい気がします。

しかし、そんな感傷に浸っていられたのも束の間。空港へ向かうマタツ(乗合バス)は、相変わらずのPole pole(ゆっくり)運転。 Googleマップでは「1時間ちょっと」、同僚は「2時間」と言っていましたが、蓋を開けてみれば3時間以上かかりました。
ケツがある時のマタツは心臓に悪い。時間が読めないストレスと空腹で、久しぶりにイライラしてしまいました。こういう時、分刻みで生きる日本人の感覚が顔を出します。
空港のチェックイン締め切りは「40分前」。 到着したのは「30分前」。 完全にアウトかと思いましたが、なんとかなりました。なんとかなるもんですね。この国では、諦めない心が一番のパスポートかもしれません。

空の上のリテールメディア
空港は別世界のように綺麗で、行き交う人々も洗練されています。売店のグラノーラは薄いのが2枚で240シリング(約240円)。 マトゥング(任地)なら、これで2食分は食べられます。
飛行機の価格はバス代の8倍近い。同じ国の中にある経済格差を痛感します。
キスムからナイロビまでは、飛行機(JAMBO JET)でたったの1時間。
寝落ちしていたので体感は3秒でした。
ふと目が覚めると、機内のテーブルやヘッドレストに広告があるのが気になりました。 「ここに広告出しませんか?」という案内。 これはまさに、リテールメディア(Retail Media)*の一種と言えそうです。
【調査】JAMBO JETの機内広告 ケニアのLCCであるJAMBO JETは、機内を「空飛ぶ広告媒体」として積極的に販売しています。 トレイテーブル、ヘッドレストカバー、搭乗券への広告掲載は、乗客という「逃げ場のない(Captive)オーディエンス」にリーチできるため、通信会社(Safaricom)や金融機関などが活用しています。 航空会社にとっては、チケット代以外の重要な収益源(アンシラリー収入)となっており、ケニアでもこのビジネスモデルは確立されています。

ナイロビの肉と、モリンガの棚
約3週間ぶりのナイロビ。出迎えてくれたのは、排気ガスの匂いと、凄まじい渋滞。
「帰ってきたな」という感覚と、「空気が重いな」という感覚が入り混じります。
ホテル近くのローカル食堂で昼食。 200シリング(約200円)で、山盛りの肉が出てきました。 マトゥングの行きつけの店なら、肉は3〜4切れ、野菜が一掴み。 同じ価格帯でも、都会の競争原理が働くからか、あるいは流通が良いからか、このクオリティと量は「安い」と感じます。パクチーベースの味付けも絶品でした。
スーパーフード「モリンガ」の発見
腹ごしらえの後は、活動のための市場調査へ。 スーパー2軒と八百屋を回り、棚の配置や価格、在庫状況をチェックしました。 やはりナイロビはすごい。何でも売っているし、売れています。

特に目が止まったのが「モリンガ(Moringa)」です。 健康食品コーナーの一等地に、かなりの棚幅を取って陳列されていました。
【補足】ケニアのモリンガ事情 日本でもスーパーフードとして注目のモリンガ。ケニア都市部では健康・美容意識の高い層に向けて、パウダーやオイルが高値で売られています。 一方、カカメガの農家では「動物の飼料」として使っている人がほとんど。 「都会では健康食品、田舎ではエサ」 この認識と価格のギャップ(アービトラージ)には、ビジネスの種が眠っているかもしれません。
とはいえ、カカメガの一般層にこの「健康需要」があるかというと、まだ時期尚早な気もします。アフォーダブル(購入しやすい価格)かどうかも課題です。

タクシー運転手の幸福論
帰り道のタクシーで、運転手と話し込みました。
話題は結婚観や人生観へ。彼の言葉は、シンプルですが強烈でした。
- 一夫多妻のリアル: 制度上は可能だが、結納金(Dowry)として100万〜300万シリング(または牛や羊)が必要だし、養う金もかかる。「たくさんの奥さんを相手にする元気はないよ(笑)」とのこと。
- 結婚の哲学: 「結婚すると、女性の体は男のものになる。だから絶対に粗末にはしない」という独特の責任感。
そして、より日本との違いを感じたのは仕事の話です。
「仕事は基本、家族のためにするものだ」
「結婚もしないで仕事ばかりしている奴は、意味不明だ」
「何のための金なんだ? その先に家族がいない金なんて、虚しいだけだろ」
「日本人よ、聞け!(そして私よ、聞け!)」 心の中でそう叫びました。
お金やキャリアはあくまで手段であり、目的は「家族」や「生活」にある。 その当たり前の幸福論が、ナイロビの渋滞の中で重く響きました。
同期との夜、共感の嵐
夜は久しぶりに同期隊員が全員集合。 それぞれが持ち寄る「珍エピソード」の数々。 日本で話したら「ありえない!」と驚かれるような話ばかりなのに、ここでは全員が深く頷き、「わかる〜」と共感できてしまう。
「常識が非常識で、非常識が常識」 そんな濃密な時間を生きている仲間たち。 みんな、それぞれの場所で戦っている。 明日からの式典、そしてこれからの活動に向けて、大きなエネルギーをもらいました。



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