関節の痛みと、オフィサーのプライド
朝からなんだか関節が痛い。 連日の慣れない肉体労働の疲労だろうか。 体調はいまいちですが、今日は畑に行く予定があったので、重い体を起こして事務所へ向かいました。
しかし、カウンターパート(CP)に
「今日畑に行くよね?」と確認すると、予想外の返答が。
「え、行かないよ」
どういうことだ。 詳しく聞くと、彼の言い分はこうでした。
「畑を作るのは農家の人たちが全部やるから、手伝う必要はない」
「手伝いたい」と食い下がると、彼は呆れたように大笑いしました。
「お前が鍬(Jembe)を持って働くのか!?」
「役割」という壁
どうやら、ここには明確な役割分担があるようです。 彼らにとって、農業オフィサーは指導する立場であり、泥にまみれて作業する存在ではない。そして農家には農家のプライドがあり、彼らの領域がある。
「どんな手順で進めるか知っているの?」と聞くと、「いや、普通に」と曖昧な返事。私がまとめていたノートを見せると、「すごいモチベーションだな」と驚かれました。結局、農家に電話して事情を説明し、「今やってる仕事が終わったら行こう」と言ってくれましたが、この文化的な壁は想像以上に厚そうです。彼らが大切にしていることをしっかりと見極めた上で関係構築していく必要があります。

終わらない「おしゃべり」とKALROの来訪
しかし、CPの言う「今やっている仕事」がいっこうに終わりません。 客観的に見れば、ずっとおしゃべりしているだけにしか見えない。何をしているのか分からない時間が過ぎていきます。
やばい。少しイライラしてきた。一人で先に行くわけにもいかないし、メンツもある。 このイライラの正体が、単なる状況への不満だけではないことに、この時の私はまだ気づいていませんでした。
昼頃、KALRO(Kenya Agricultural and Livestock Research Organization:ケニア農業畜産研究機構)のメンバーが事務所を訪れました。 彼らは土壌調査を行う専門チームです。
【調査】KALROの土壌調査サービス KALROはケニアの農業研究の中枢機関です。彼らの研究所では、農家向けに手頃な価格で土壌分析サービスを提供しています。 一般的な「基本分析(pH、窒素、リン、カリウムなど)」であれば、1サンプルあたり約1,000シリング(約1,000円)程度で実施可能です。民間ラボだと3,000シリング以上することもあるため、非常に良心的な価格設定です。 必要な栄養素をピンポイントで知ることで、無駄な肥料コストを削減できるため、今後のプロジェクトでも活用できそうです。
ケニアの農業DX:KADICとKAOP
そういえば、今朝のニュースでも興味深い農業システムが取り上げられていました。 KADIC(Kenya Agricultural Data and Information Centre)という、ケニア政府が構築した農業データセンターの話です。
特に便利そうだったのが、KAOP(Kenya Agricultural Observatory Platform)というシステム。 サイトを見てみると、自分の住む地域の(County – Sub-county – Wardの粒度で、)ピンポイントな天気予報や市場価格を見ることができます。
調べてみると、ガラケーが主流の農家向けにUSSDコードもしっかり用意されていました。
*616#: KAOPにアクセス。天気予報や市場価格を知ることができる。*616*3#: KIAMIS(農家登録システム)にアクセス。政府の肥料補助金(Subsidy)を受けるための登録や確認ができる。
これ、めちゃくちゃ使えそうです。 「イチゴの価格をどう設定するか」という時の市場データ裏付けにもなるし、「*616#の天気予報」をもとに豪雨が多いこのエリアで対策ができるもしれない。
ただ、システムや仕組みは立派ですが、「現場の農家にどれくらい浸透しているのか」は別問題です。 実際に使いこなしている農家はどれくらいいるのか。登録のハードルはどこにあるのか。 このあたりは、実際に現場で聞き取り調査をしてみたいと思います。

38.5℃の発熱とマラリア検査
KALROとの会話が終わり、写真を撮ろうと椅子から立ち上がった瞬間でした。
ふらっと、めまいがした。 ああ、自分の精神状態が安定せず、イライラしていた理由が分かりました。シンプルに、体調が悪いんだ。
畑に行くか一瞬迷いましたが、全身が鉛のように重く、諦めて帰宅することに。 家に着いて熱を測ると37.5℃。微熱です。 そのまま泥のように眠り、再び測ると38.5℃まで上がっていました。 さすがにきつい。
脳裏によぎるのは、やはり「マラリア」の文字。 手持ちの簡易検査キットを取り出します。頭がぼーっとしていたせいか、1回目は採血の手順を間違え、バッファ液も入れ忘れて失敗。 震える手で2回目に挑み、なんとか成功。
結果は、陰性(Negative)。
ひとまず安心です。 不思議なもので、検査のためにドタバタと動いていたら、少しだけ気力が戻ってきました。

日本食という処方箋
JICAの健康アドバイザーの指示に従って、病院には行かず、自宅安静で復活を目指します。夜ご飯は、買っておいたサツマイモを使って軽く「さつまいもご飯」を作り、日本から持ってきたインスタント味噌汁と一緒に食べました。
五臓六腑に染み渡るとは、まさにこのこと。弱った体に、出汁の優しさが沁みていきます。 こういう時、日本食の偉大さを痛感します。ありがたい。
今日はもう、何も考えずに早く寝ます。 おやすみなさい。


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