【ケニア派遣52日目】「家できたぞ!」という嘘と、イチゴ栽培の参入障壁

JICA海外協力隊
JICA海外協力隊Kakamegaケニア派遣

「家できたぞ!」という幻

今日は運命の引っ越し予定日。

朝、ローカル食堂でご飯を食べていると、大工の兄ちゃんが隣に座ってきて言いました。 「家、できたぞ!」。 「おお!」と期待を膨らませて新居に向かいました。

しかし、現実は甘くない。目の前に広がっていたのは、依然として工事中の我が家。さっきの言葉は一体何だったのでしょうか。幻聴? 「今日中には完成させる」とオーナーは力強く言ってくれました。・・・しかし、夕方に再訪しても、やはり完成していませんでした。

もう一時滞在していたゲストハウスはチェックアウトしてしまったので、荷物だけ一部屋に置かせてもらい、今日は同期隊員の家に避難することに。「明日中には完成させる」「もうすぐできる」「もうできた」 これらの言葉は、挨拶がわりのBGMだと思った方が良さそうです。正直、明日完成するかも怪しいですが、まあPole pole(ポレポレ:ゆっくり、気長に)でいきましょう。

ゲストハウスと4往復して荷物を運び切りました。明日は筋肉痛だ。

チェルシーファンの同僚と、SHEPの勉強

日中、仕事はありませんでした。同僚は一日中、椅子に座ってSNSを見ています。彼は熱狂的なチェルシーファン。面白いのは、ケニアのプロリーグやナショナルチームには全く興味がなく、選手の名前すら知らないということ。「サッカー=プレミアリーグ」なのです。

私はその横で、一日中勉強をしていました。 テーマは、農業グループへの導入を検討しているSHEPアプローチと、来週から本格始動する「イチゴ栽培」について。

【用語解説】SHEP(シェップ)アプローチ JICAがケニアで開発し、アフリカ全土に広がっている農業普及手法。「作ってから売る(Grow and Sell)」のではなく、市場調査を通じてニーズを把握し「売るために作る(Grow to Sell)」よう農家の意識を変えるアプローチのこと。 (Smallholder Horticulture Empowerment and Promotion)

カカメガでイチゴを作る「参入障壁」

今の時代、ネットには無限の資料があります。ケニアの事例、日本の研究、北米の論文。 読み漁って分かったのは、私の任地(カカメガ)は決してイチゴ栽培に最適な気候ではないということ。

しかし、「適していない」ということは「参入障壁がある」ということでもあります。 実際、カカメガのスーパーではイチゴがある日とない日がまばらで、供給が安定していません。 温度、水、病害虫。ここの管理さえクリアできれば、ブルーオーシャンになり得る。 この週末、さらに深く勉強し、すでにイチゴを育てている協力隊員の方も近いうちに訪ねてみようと思います。

カカメガダウンに売られている、いちご。小粒ですが味はい美味しいです。

マーケティングとは「距離」を縮めること

その他のプロジェクトについても構想を練っています。 マーケティング全体を概観すると、大きく二つの要素に分けられると考えています。

  1. プロダクトデザイン: 価値ある商品を作ること(例:美味しいピザを作る)
  2. コミュニケーションデザイン: その価値を届けること(例:熱々のまま早く届ける)

私が尊敬するマーケター、西口一希さんは「マーケティングとは、プロダクト(生産者)と顧客の距離を近づけること」だと定義しています。 生産者と顧客の間には、物理的・心理的なハードルが無数にあります。それをいかに取り除くか。

そのためには、まず顧客にとって「便益(ベネフィット)」があり、かつ他ではなくそれを選ぶ理由となる「独自性」のあるプロダクトを作らなければなりません。 それをベースにして初めて、「どう見せるか」「どう伝えるか」というコミュニケーションが機能します。

「飾り」から「本質」へ

前職の広告代理業では、主に後者の「コミュニケーションデザイン」にスコープが限られていました。 多少独自性が薄い商品でも、見せ方の工夫でなんとか魅力的に飾る。それが仕事でした。

でも、今は違います。 中長期的に売れ続けるためには、プロダクトそのものから描いていく必要がある。 難しい。でも、面白い。 まずは自分で実践し、小さく成功させ、人を巻き込んで拡大していく。そのプロセスを楽しみます。

「ドライフルーツ」をの存在や味をまずは”知ってもらう”というマーケティング活動かな、、?

豚汁と、イノベーションの起源

夜、同期隊員と久しぶりに豚汁(インスタント)を作って飲みました。 五臓六腑に染み渡る旨さ。「うますぎた」以外の言葉が見つかりません。

友人がAIと会話して得た知識によると、日本とケニアの食文化の違いには「季節性」が大きく関係しているそうです。

  • 日本: 冬があり、作物が取れない時期がある。→ いかに保存するか?という課題から「発酵」や「乾物」などの技術が生まれ、食文化が多様化した。
  • ケニア: 気候に恵まれ、一年中何かしらの作物が取れる。→ 新鮮なまま食べられるため、複雑な保存技術や調理法が発達する必要がなかった。

非常に腑に落ちました。 恵まれた環境ではないからこそ、工夫が生まれ、そこから豊かさが醸成される。この逆説的な構造は、ビジネスあるいは協力隊活動にも通じます。

重要なのは、「食料保存」の歴史がそうであったように、ペイン(痛み・課題)を発掘すること。 そこから「どうしたら良くなるか」を考え抜く先に、イノベーションがある。 イチゴがないなら作ればいい。家が完成しないなら泊めてもらえばいい。
不便を楽しみながら、来週からの本格始動に備えます。

久世福商店の豚汁。沁みた。

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