夜明け前の別れ
朝5時。まだ暗闇に包まれたナイロビで、一日は始まりました。
今日は、それぞれの任地へ向かう移動日です。
眠い目をこすりながら、同期隊員の荷物を運ぶのを手伝う。 重いスーツケースを積み込みながら、ふと寂しさが込み上げてきました。福島での訓練から数えれば、約4ヶ月。毎日顔を合わせ、同じ釜の飯を食べ、苦楽を共にしてきた仲間たち。 「バイバイ」 その短い言葉の裏には、言葉にしきれないほどの思い出が詰まっていました。

移動という名の「余白」
今回はバスではなく、JICAが手配してくれた車での移動です。 乗り心地はバスとは比べ物にならないほど快適。揺れの少ない車内で、本を読んだり、ぼんやりと考え事をしたり。
日本で働いていた頃は、次から次へとタスクに追われ、生活の中に「余白」なんてありませんでした。立ち止まって考える時間すら贅沢だった。でも、ここでは違います。 流れる景色を眺めながら、自分と向き合う時間がたっぷりある。
これからお世話になる農業事務所は、きっと日本のような分刻みのスケジュールではないでしょう。 「暇」を恐れるのではなく、この有り余る時間を「インプット」と「アウトプット」の好機と捉えたい。そう思えるだけの心の余裕が、今の私にはあります。
静岡を超える、緑の絨毯
道中、車窓に飛び込んできたのは、見渡す限りの茶畑でした。 その広さは、日本一の茶所・静岡を遥かに凌駕するスケールです。 見渡す限りの緑の絨毯。そして、その中で働く人々の数にも圧倒されました。機械ではなく、人の手で摘み取られていく茶葉。
この国の農業が、いかに多くの人の労働力によって支えられているか。
美しい風景の中に、ケニアの産業の屋台骨を見た気がしました。

軽くなる車体、重くなる寂しさ
約10時間の長い旅路。 最初は車体が沈み込むほど満載だった荷物と、4人の同期たち。
しかし、経由地に停まるたびに、一人、また一人と車を降りていきます。
仲間が降り、荷物が降ろされる。 車体が物理的に軽くなるたびに、反比例するように、胸の奥に寂しさが沈殿していくのを感じました。
私は一番遠い任地なので、降りるのは最後です。 最後まで残った空席だらけの車内は、私たちがもう「訓練生」という集団ではなく、一人一人の「隊員」として自立しなければならないことを、静かに突きつけているようでした。

嫉妬と祝福と、明日の家探し
最後の私は今日は到着せず、任地に向かう道中で一泊し、英気を養います。
明日はいよいよ、2年間住む家を探す日。
先に任地に着いた同期たちの家を見ると、想像以上に広くて綺麗で、正直なところ「いいなぁ」という嫉妬心が湧いてきます(笑)。 でも、それは彼らが素敵な人たちだからこそ、良い縁に恵まれたのでしょう。
私も負けずに、最高の城を見つけたいと思います。



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