【ケニア派遣107日目】「ゴロゴロ」で量る市場調査と、ウガンダ産ばかりの野菜。足で稼ぐデータとKAMISシステム

JICA海外協力隊
JICA海外協力隊Kakamegaケニア派遣

「ゴロゴロ」で量るアナログな市場調査

今日は、ムミアス事務所のオフィサーが週に1回行っている「マーケット調査」に同行させてもらいました。

調査の目的は、肥料から穀物、地元の野菜まで、市場に流通している品物の「小売価格」と「卸売価格」を調べ、さらに「それがどこから来ているのか(産地)」をヒアリングすることです。

朝から活気あふれるマーケットに入り込み、色々な人に話を聞いて回ります。 計量や価格の出し方がとてもケニアらしくて面白いです。 例えば「豆」を売っている人は、量り売りではなく「ゴロゴロ」と呼ばれる大きな空き缶(約2kgの容量)を単位にして販売しています。 調査員はあらかじめ「1ゴロゴロ=約◯kg」という換算値を持っているので、現場では「1ゴロゴロいくら?」と価格だけを聞き出し、後からkg単価に計算し直すという手法をとっています。一方、野菜などの不定形なものは、しっかりと計量器に載せて重さを量って計算します。

世間話を交えながら協力してもらい、価格を聞き出していく。こうして現場を歩いてみると、当然ですが「卸売」と「小売」の価格差が結構あることに気づかされます。

ゴロゴロ。

JICAの教えと、ウガンダ産ばかりの野菜たち

1時間ほどかけて市場を歩き回り、複数の業者にヒアリングをしていると、一人の卸売をしているお兄さんが話しかけてきました。

「俺は昔、JICAから色々なことを教えてもらったんだ」 彼はそう語り、バナナの生産効率アップの手法や、JICAが推進している「SHEPアプローチ(作ってから売るのではなく、売るために作るという市場志向型農業)」について熱弁し始めました。 さらに、「市場のリアルな情報を知るために、俺は卸売の仕事も始めたんだ」と胸を張ります。 少々胡散臭い雰囲気はありましたが、話の筋は通っており、この人はなかなかやり手かもしれないという印象を受けました。定期的にコンタクトを取りたいです。

そして、この調査で私が最も驚いたのは「野菜の産地」です。 市場に並んでいる大量の野菜、実はそのほとんどが地元で採れたものではありませんでした。多くが隣国ウガンダからの輸入品であり、一部はナクルやブンゴマなど、別のカウンティ(郡)から長距離を運ばれてきたものだったのです。

「あ、そうなんだ……」

この周辺の農家もたくさん野菜を育てているはずなのに、なぜ市場のメインストリームに乗っていないのでしょうか。近隣から仕入れた方が圧倒的に輸送コストを抑えられるはずです。 生産量のブレなのか、品質の差なのか、あるいは強固な流通利権があるのか。これは今後、プロジェクトを進める上で非常に重要な仮説の種になりそうです。

KAMISと、顔を出す「回数」の魔法

事務所に戻った後、市場で集めたデータをシステムに入力する作業を見学しました。
スマートフォンで位置情報をオンにするとログインできる専用アプリを使います。

入力項目は「重さ」「価格」「仕入れ先」のみ。とてもシンプルです。 入力すると、自動的にkg単位の価格に換算され、データが保存されます。そしてその情報は、「KAMIS(Kenya Agricultural Market Information System)」という国のプラットフォームサイトにリアルタイムで反映される仕組みになっています。

人が手入力している以上、多少の入力ミスはありそうですが、このスピード感とシステム化は素直に素晴らしいです。Google Apps Script(GAS)などでこのデータベースと上手く連携できれば、農家向けの価格情報発信など、色々と使い倒せそうなポテンシャルを感じました。

https://kamis.kilimo.go.ke

午後は再びムミアスの街へ出て、マッシュルーム栽培に必要な資材のコストをヒアリングして歩き回りました。この街なら、必要なものは大抵揃えられそうです。

歩き疲れて帰宅する前、配属先事務所に寄り、久しぶりにボスと少しだけ雑談をして顔を出しました。 用事があろうとなかろうと、「少しでも顔を出す」。 これ、異文化の組織で生きていく上で結構大事なことだと最近痛感しています。 コミュニケーションの深さも大切ですが、それ以上に「接触する回数(単純接触効果)」を増やすことが、ケニア社会における信頼構築のショートカットになる気がします。

押し付けられた善意と「お金の正体」

夕方、20Lの大きな飲料水を買って帰宅する道中、少しうんざりする出来事がありました。

重い水を運んでいると、見知らぬお兄さんが近づいてきて、私が「ノー」と断っているのにも関わらず、強引に水を取り上げて運び始めました。そして案の定、家に着くとチップを要求してくる。

「いや、頼んでないし!」

善意の押し付けなのか、最初から金目当ての確信犯なのか。
もちろん後者でしょうが、モヤモヤした気持ちを抱えつつ、その場を収める羽目になりました。

でも、これはケニアの路上に限った話ではなく、世の中の「ビジネス」の構造にもよく見られる現象だと思います。 相手が求めていないのに「良かれと思って」過剰なサービスを提供し、見返りを求める。あるいは、勝手にやっておいて対価を要求する。

本来、お金をもらうということは「感謝の総量」を受け取ることと同義であるべきだと思います。 相手に価値を提供し、「ありがとう」という感謝の気持ちが形になったものがお金であり、それが市場の健全な原理です。しかし現実には、価値の合意がないままお金だけが動く(搾取される)場面が多々あります。

私がこれから農家に提案する事業も、一歩間違えれば「押し付けの善意」になりかねません。相手が本当に価値を感じ、心から感謝の総量としてのお金(利益)を循環させられるか。道端のうざいお兄さんは、私に「価値とお金の関係」という重要なビジネスの真理を、身をもって教えてくれたのかもしれません。

点滅する夜

夜。今日も案の定、停電です。

しかし今日の停電は少しリズムが違いました。 1時間ごとに「停電しては電気がつき、また停電してはつく」という謎の点滅を繰り返し、20時を過ぎたところでバッタリと完全に消え去りました。面白いな。

市場のリアルな数字に触れ、新しい仮説が生まれた107日目。今週も、動き回って疲労が溜まっているので、週末は引き篭もることにします。

ローカル食堂。
コカコーラの営業って、本当に草の根まで広がっていてすごいよな。

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