午前中は、草刈り。
九州の強い日差しに体力は削られますが、綺麗になっていく土地を眺めるのは達成感があり、不思議と気持ちの良い作業でした。
その作業中、社長からかけていただいた言葉が、深く心に残っています。
”よそ者”だからこそ見えることがある。私たちが疑いもなくルーティンにしている作業も、外から来た人には違和感に見えるかもしれない。その違和感を大切にして、効率化や最適化できる方法をぜひ提案してほしい
――違和感を、大切にする。
それは、昨日までの私が「よそ者」という立場に感じていた不安を、確かな「価値」へと転換してくれる言葉でした。
神経を研ぎ澄ます仕事と、クローンの胡蝶蘭
草刈りの後は、胡蝶蘭を美しく見せるために支柱に沿って曲げていく作業。
これが、想像を絶するほど神経を使います。一本およそ2万円。その価値を背負い、純白の花びらを傷つけぬよう、しなやかな茎を折らぬよう、一瞬も気を抜かずに50本の蘭と向き合いました。
正直に言うと、前職では誤字脱字が多く、細かい作業には苦手意識がありました。
しかし、これほどまでに一つの作業に神経を研ぎ澄ませる体験は初めてで、その緊張感の中に、一点に深く集中する楽しさを見出している自分に気づきました。
ただ、この繊細な作業を唯一助けてくれていることがあります。それは、胡蝶蘭のサイズや形に個体差がほとんどないこと。なぜなら、これらはすべて「クローン」だからだそうです。初日に感じた「作り物のような美しさ」という感想は、あながち間違いではありませんでした。
高い技術力を駆使して品質を均一に保つ。高単価な商品だからこその、農業の最先端に触れた瞬間でした。
黄昏の海へ。人生初の釣りと、波に揺られる幸福
仕事を終え、今日の食材調達はスーパーではなく、海へ。
社長の船に乗せていただき、人生で初めての釣りに向かいました。
午後の強い日差しが和らぎ、光が柔らかく傾き始めた頃、穏やかな海へと滑り出す船。
エンジン音と波の音だけが響く中、思考の櫂を手放し、ただ流れる景色と風のリズムに身を委ねる。
それだけで満たされていくような、幸福な時間でした。
ポイントに着き、糸を垂らせばすぐに魚が食いつく、「入れ食い」状態。
釣りは”場所”が全てなのだと、経験がものを言う世界の面白さにすっかり魅了されてしまいました。
この楽しさは、ハマってしまいそうです。

手作りのチキン南蛮と、叶えられた小さな目標
夜は、宮崎出身の同居人が、本場のチキン南蛮を振る舞ってくれました。「唐揚げにタルタルをかけるだけじゃない。甘酢にしっかり潜らせるのがポイント」だと熱弁する彼。
そのこだわりの一皿は、文句なしの美味しさでした。
そして食後、今日海で釣ったカサゴと向き合いました。自分で釣った魚を、自分で捌く。
2024年の目標リストに書きながらも、叶えられずにいたことが、この島で思わぬ形で実現しました。
仕事での学び、美しい海での体験、仲間との温かい食卓。
一日を通して、この島での生活の手触りが、また少しだけ増した気がします。

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