【グローカル13日目】命が”肉”に変わる瞬間。そして、耕作放棄地の現実。

グローカル訓練

今日の活動は、地域の獣害対策に取り組む「株式会社イノP」での活動がメインでしたが、朝と夕方は研究室の方々が別の用事のため、宮川洋蘭でいちごの鉢植えの片付け作業を進めました。終わりなき闘いに思えたこの作業も、ついに終わりが見えてきました。週明け月曜日には完了しそうです。一つのことをやり遂げる達成感を、今から感じています。

しかし、今日のハイライトは、そんな穏やかな達成感とは対極にある、あまりにも強烈な体験でした。

初めて立ち会う、命の現場

「猪が罠にかかった」。その一報を受け、止めさしの現場に立ち会わせていただくことになりました。

罠にかかっていたのは、推定1歳、20キログラムほどのメスの猪。電気槍が使われ、その命はほとんど抵抗する間もなく絶たれました。

哺乳類が命を落とす瞬間。その場に居合わせたのは、人生で初めての経験です。これまでYouTubeなどで映像として見たことはありましたが、モニター越しに見るのと、匂いや視線、その場の空気まで五感で直接感じるのとでは、全くの別物でした。

電気を流された後の痙攣。虚ろになっていく目。地面に流れていく血。その一つひとつが、網膜に焼き付いています。

言葉にならない感情の渦

正直に言って、ショックでした。

傲慢な感傷だと自覚しつつも、湧き上がる「かわいそう」という感情。 一方で、畑を荒らされ続ける農家の方々の苦労への想い。 そして、目の前の命がこれから”肉”として扱われることへの、感謝と、畏怖。 様々な感情が同時に、そして猛烈な速さで頭を駆け巡り、言葉にするのが難しい、複雑な感情の渦に飲み込まれました。

動物のウェルフェア(福祉)はどうあるべきか。そして、こうした現実に日々向き合う狩猟者の方々の心のケアは。社会が掲げる理想と、現場の現実との間にある、埋めがたいギャップの難しさを痛感します。

ただ、イノ Pの方がおっしゃった「これも、ある意味で”食育”です」という言葉には、心の底から同意しました。
私たちは、この自然という大きな環の中で生かされている。その厳然たる事実を、改めて全身で理解した瞬間でした。

命と向き合った後の、静かな海の「隠れ家」で

強烈な体験の後、昼食のために「海の隠れ家」というおしゃれなお店へ。
様々な感情が渦巻く頭を抱えながら食べた食事は、正直、あまり味を覚えていません。

しかし、静かな海を眺めながら、「生きていること」と、他の命をいただいて「食べること」について、これほど深く考えさせられたことはありませんでした。

“放棄の仕方”が問われる、耕作放棄地の問題

その後は、各所の罠場を巡りながら、猪が通りやすい場所の傾向などを教えていただきました。
その中で特に印象的だったのが、「耕作放棄地」の話です。

畑を放棄するにしても、「どう放棄するか」が重要である、と。果樹などをそのままにしておくと、そこが野生動物にとって格好の餌場となり、結果的に獣害を拡大させてしまう。実際に、人の手が入らなくなり森のようになった放棄地をいくつも見ましたが、そこはまさに動物たちの楽園のように見えました。

こうした社会的に意義のある活動に、どうすれば持続可能なお金が流れる仕組みを作れるのか。どうすれば、これをビジネスモデルとして確立できるのか。そして、この課題解決のために、どうすれば都会の優秀な人材を巻き込めるのか。

命の現場に立ち会った今日、これは私一人が向き合うにはあまりに大きく、これからの日本社会全体が向き合うべき、重く、しかし重要なミッションなのだと痛感しました。

※以下閲覧注意。

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